車いすでファッションショー 県内初開催
車いす利用者による着物ファッションショー「パラコレクション」が21日、和歌山市手平の和歌山ビッグ愛大ホールで県内で初めて開かれた。県内の3~90歳の13人がモデルとして参加。華やかな衣装で照明を浴び、ランウェイをさっそうと進むと、300人の観客でいっぱいとなった会場から大きな拍手と歓声が湧き起こった。
同イベントは北海道が発祥。車いす利用者も自由にファッションを楽しめることを知ってもらおうと、身体介助が必要な人らに対応できる福祉理美容士の養成に取り組む日本理美容福祉協会帯広センターの森田浩幸代表(56)が2021年に企画し、全国へと広がっている。横浜、大阪、名古屋に続き和歌山は5番目の開催。各地の団体などが主催し、内容や演出はそれぞれの地域の特性を生かして実施する。
和歌山では、パラコレ和歌山実行委員会が主催。車いすに座ったままの状態で着付けをする同市の福祉車いす着付け師、宇治田いさ子さん(59)=和歌山市=が実行委員長を務めた。
「どんな時も輝ける」をテーマに、七五三、卒業式、成人式、結婚式など人生の中で華やかに着飾るイベントシーンを設定。留め袖、羽織はかま、振り袖姿でモデルが次々に登場した。
フィナーレは車いすで羽織はかま姿の石原秋一さん(90)=和歌山市=、白無垢を着た壽恵さん(83)夫妻が手をつないでゆっくりとステージを進み、舞台中央でポーズを決めると、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
はかま姿の同市の松岡由依子さん(37)は「最初は出るのが嫌だったけど、看護師に良い経験になると言われて出演を決めた。きれいな衣装とメイクでうれしい」と恥ずかしそうにほほ笑んだ。
黒の紋付きはかまの新郎役をした濱田勇斗さん(34)は「出演依頼を受けた時、普段助けてもらうことが多い自分が、人の役に立てるなら喜んで出たいと思った」と話し、振り袖をドレス風にアレンジした衣装で花嫁姿になった有田市の尾藤友紀さん(45)は「緊張したけれど一生の思い出になった」とにっこり。
森田さんは「和歌山の盛り上がりは力強く思う。このイベントに出演したパラコレモデルが、パリコレモデルのように有名になって発言力を持ち、世の中を変えていってほしい」と意気込みを話し、最終的には全国のパラコレモデルが集まり、東京の日本武道館での開催を目指しているという。
宇治田さんは「このショーを通じて車いすユーザーの世界観を広げ、意識改革のお手伝いができ、障害者と健常者が共に生きるまちづくりにつながっていってほしい」と話していた。