最後の「夏」公演へ 県第九合唱団練習大詰め

和歌山県第九合唱団がオーケストラと共に歌い上げる「夏の大合唱」の最後の演奏会が7月14日に行われる。ことしで活動を終了する合唱団の集大成に向け、最初の夏公演で取り組んだフォーレの傑作「レクイエム」の再演、県出身アーティストの自作を取り上げるなど、意欲的なプログラムを用意。25日には公演本番を指揮する藤岡幸夫さんを迎え、団員80人が熱意あふれる練習で歌声に磨きをかけた。

同合唱団は1972年に和歌山市の県民文化会館大ホールで最初の演奏会を開いて以来、毎年12月にベートーベンの交響曲第9番(第九)を演奏し、2001年には夏の公演も開始。団員は合唱経験や年齢などを問わず募集し、プロのオーケストラ、指揮者と共に音楽をつくり上げる喜びを、これまでに延べ8000人以上が体験した。

団員不足や観客数の減少が続き、活動の継続を断念する決断をしたが、半世紀以上にわたり和歌山の音楽史に輝かしい成果を刻んだ。

活動終了「残念」 指揮者の藤岡さん

「夏の大合唱」は01年の最初の公演から、藤岡さん、関西フィルハーモニー管弦楽団と共演。長く合唱団を見てきた藤岡さんは「元気で明るく、大らかな合唱団。クオリティーも上がり、昔よりも今がいい。それだけに活動終了はすごく残念。本当にもったいない」と話す。

それでも、プロと共演する全国の市民合唱団の多くが自治体などの補助を受けて演奏会を行う中、県第九合唱団のように民間の力で活動を続けてきた例は少ないと称賛する。

合唱団の今の歌声については、「いい感じに仕上がってきている。本番までにまだまだ良くなる」と期待を込める。

96年から合唱指導をしている瀬優佳さんは「合唱団と一緒にこれまで積み上げてきた喜びと、最後の公演という寂しさが入り交じっている。メンバーはすごく成長がみられ、仕上げたいイメージなど思いが通じる。仲間と共有する最後の公演の時間が、終結ではなく新たな始まりであればいいと思う」と話す。

原典版で初演奏 最終公演も挑戦

今回の「レクイエム」は、藤岡さんの提案により、通常演奏される楽譜とは異なる「原典版(ラター版)」での演奏に初挑戦する。

通常版は、フォーレの弟子の手によって管弦楽が加筆されており、原典版は管弦楽の編成が小さく、フォーレ自身が望んだ響きにより近いとされる。演奏会で聴く機会は少なく、その点でも貴重な公演となる。

練習では、藤岡さんが歌詞のラテン語と日本語の発音の違いなどを団員に説明し、カタカナ読みで歌わないことなどを注意。声が元気過ぎる時には「そんな栄養ドリンク飲んだみたいな声出さないで」などとユーモアあふれる指導も飛び出し、真剣で楽しい練習が続いた。

「夏の大合唱」は県民文化会館大ホールで午後3時開演。管弦楽は関西フィルハーモニー管弦楽団「レクイエム」は第2部となる。
第1部は、和歌山市出身のバイオリニスト・寺下真理子さん作曲の「Home of spirits」、橋本市出身の尺八奏者・辻本好美さん作曲の「祈りの道」などを演奏。いずれも、オーケストラ版を県第九合唱団の公演で初演しており、作曲者と共に再演する。

チケットはS席5500円、A席4500円、大学生以下2000円。同館などで取り扱い。問い合わせは和歌山音楽愛好会フォルテ(℡073・422・4225)。

 

練習に熱が入る団員ら

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