旧安原小学校吉原分校 市民ら活用の道探る

名草山の麓、和歌山市の吉原地区で、約70年にわたって子どもたちを見守り続けた安原小学校吉原分校。2018年3月に休校、23年3月に廃校となり、現在も木造校舎が残る。市は当初取り壊す方針だったが、活用を望む声が上がり、今は解体を見合わせている。校舎や、この地が持つ力に魅力を感じる市民らが集まり、地域の交流拠点にしたいと、校舎の保存や校庭を含めた空間活用の道を模索している。

市教委教育政策課によると、吉原分校は1897年に吉原分教場として設置。1946年に現在の地に移ったとされる。1~4年生が通い、5年生からは本校で学んだ。

現在は1952年に建てられた平屋と72年建設の2階建ての木造校舎2棟、プールや遊具が残る。校舎と校庭は借地、プールは市有地に建つ。市側は利活用を探ったが、校舎の耐震性に問題があることなどから具体的な活用のめどは立たず、解体撤去し土地を返却することを決めた。

市内で精神科クリニックを開く伊良波範子さんが、分校が解体の危機にあるのを知ったのは約2年前。緑に囲まれた地に建つ木造校舎の趣に「まるでジブリの世界のよう」と心を動かされた。この場所に来るだけで、心が癒やされるようで、貴重な「環境財産」だと感じた。保存・活用に向けて実行委員会を立ち上げ、地域で意見交換会や分校の魅力を伝えるイベントを開催。賛同者の輪を広げる取り組みを続けている。

市では、民間で良い活用策があれば、校舎の譲渡も検討するという。耐震工事を施し、土地の賃借料をまかなうことができ、地域住民に理解が得られることなどが条件。

同地域は高齢化が進むが、新興住宅地もできている。伊良波さんは校舎を活用し、子育て世代や青少年、高齢者、あらゆる年代の人が交流でき、心の健康や幸福度を得られる仕組みづくりができないかと考えている。「官民が連携し、この場所を拠点にさまざまな人がつながることで社会課題の解決になる活動ができれば」と願っている。ただ、巨額な耐震工事費をどう調達するかが大きな課題という。

市は来年度の当初予算に校舎解体の経費を計上するか検討するため、校舎を保存するのであれば、遅くとも9月ごろまでに活用案を出してほしいと求めている。

木造校舎の前で伊良波さん(左から2人目)ら

木造校舎の前で伊良波さん(左から2人目)ら

関連記事

同じカテゴリのニュース一覧