雄パンダの貸与を要請 訪中で岸本知事ら

四川省の成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地を視察する岸本知事(県提供)
四川省の成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地を視察する岸本知事(県提供)

岸本周平和歌山県知事は7月30日の定例記者会見で、21~26日の中国訪問について発表した。四川省では成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地で施設トップの尹志東主任らと会談し、白浜町のアドベンチャーワールドで共同繁殖研究を継続するため、新たな雄パンダの借り受けを要請。実現に向け、今後も日本政府や県選出国会議員に働きかけていくとしている。

岸本知事は今回の訪中で、県との友好提携40周年を迎えた山東省訪問(既報)に続き、23、24日に四川省を訪れた。

同基地とアドベンチャーワールドは、1994年からジャイアントパンダの共同繁殖研究を進め、ことしで30周年。これまでに17頭が生まれ、中国に返還した13頭のうち4頭が20頭以上の子孫を残すなど、共同繁殖研究として最多の実績を挙げている。

白浜で生まれた17頭のうち16頭の父親となった「永明」は昨年2月に返還され、アドベンチャーワールドには現在、雄パンダがいないため、新たな雄の貸与を要請した。

岸本知事の要請に対し、尹主任は「県民の熱い希望は受け止めました」などと応じ、アドベンチャーワールドの飼育技術、繁殖技術を高く評価した。会談にはパンダを所管する中国国家林業草原局国際合作司の吴青副所長、中国動物園協会の鄭広大会長も同席。岸本知事は「県、アドベンチャーワールド、パンダ基地の合意で進むような話ではない。大きな外交案件になるとの印象を受けた。今回の私の訪問はスタート。今後、日本政府に働きかけ、着実に、粘り強く、跡継ぎを呼ぶことに努力していきたい」と述べた。

同基地には県日中友好協会(中拓哉会長)も訪問し、永明の功績に対する感謝状、永明の姿に光が浮かび上がるよう竹筒を加工した「竹あかり」を尹主任に手渡した。中会長は「永明の子どもたちが元気に過ごしている姿を見られ、中国でのパンダ人気もひしひしと感じた。パンダが日中友好に果たす力は大きく、雄のパンダを白浜に借りることができたらうれしい」と話した。
 県と四川省は、パンダを通じた交流に加え、2008年に死者7万人、負傷者37万人の被害があった四川大地震以降、防災減災の取り組みでも協力し、22年の友好提携締結につながっている。

岸本知事は、同地震を教訓とするために建設された省防災・減災教育館を視察し、施小琳省長との会談では、これまでのパンダ、防災分野での連携に加え、青少年交流や新エネルギー分野でも協力関係を強めることで合意した。

25日には岸本知事は首都・北京を訪れ、中国を代表する名門・清華大学で、和歌山大学、高野山大学とのフォーラムに出席。添田隆昭高野山大学長が空海について基調講演し、清華大からは南方熊楠の研究成果などの発表が行われた。