濃厚で芳醇な味わい「黄金桃」
前号では、鰻と梅干しの食べ合わせについて取り上げた。食欲が落ちる猛暑の夏でも、おいしく水分と栄養分を摂取できるのが桃。この時期に出回る、一風変わった桃が「黄金桃(おうごんとう)」だ。外皮が一般的な桃の色とは異なり、美しい黄色をした品種。今週は黄金桃を紹介したい。
黄金桃は「川中島白桃」の偶発実生として誕生したもの。果実のサイズは300㌘程度とやや大きめ。見た目がかわいらしく香りも良好である。袋をかぶせて栽培したものは美しい黄色に仕上がるが、無袋で栽培したものは果皮が赤くなる特徴がある。
食してみると甘味が強く、程よい酸味もあり、極めて濃厚な味わい。緻密な果肉と豊富な果汁から、熟したものはまるでマンゴーのような舌触りになり、見た目も味も、桃の概念を覆してくれる。
一般的な桃と同様に、そのまま食するのがシンプルでその味わいを堪能できるが、酸味を生かして、ケーキやタルトに使うことも。また、マンゴーのようにミキサーにかけ、スムージーにしてもおいしくいただける。
農水省統計(2020年)によると、主な生産地は、長野県(35㌶)、山梨県(31㌶)、山形県(28㌶)、福島県(20㌶)、新潟県(3㌶)と、甲信越と東北。和歌山県は第10位で2㌶程度と栽培面積はわずかであるが、とくにことしは産直市場などで目にする機会が多い。
黄金桃は晩生種とされ、全国的には9月中旬ごろまで出回るが、県内では7月下旬には市場に並ぶ。今が食べ時の黄金桃。桃の概念を覆す、極めておいしい筆者お薦めの品種。ぜひ、食べてみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)