県内でも栽培「マイヤーレモン」
前号では、瀬戸内の魅力を凝縮し、サッパリとした味わいの「レモン鍋つゆ」を取り上げた。国内におけるレモンの三大産地は、広島県(約4400㌧)、愛媛県(約1700㌧)、和歌山県(約800㌧)と、瀬戸内海に面した地域での栽培が盛ん。レモンにもさまざまな種類がある。今週は和歌山県内でも栽培される希少品種「マイヤーレモン」を紹介したい。
マイヤーレモンはレモンとオレンジが自然交配した品種とされる。中国が原産で、日本の実業家がアメリカから国内に持ち帰り、兵庫県川西市の専修学校で栽培。昭和35年(1960年)ごろ、伊丹市の農家に譲渡され栽培が広がった。現在も伊丹市内での栽培が盛んで、市のマスコットキャラクターに起用されるほど。地域の特産品として定着している。
生産量が多くないため統計データは無いが、国内で栽培されるマイヤーレモンの約9割が三重県産とされる。栽培に欠かせないのが豊富な水分であるという。豊富な雨量と水はけの良さが栽培の条件で、国内の平均的な降水量の2倍近くの降雨がある三重県御浜町や紀宝町が主な栽培地。以前、紀宝町を取り上げた当コーナーで紹介のとおり。同様の条件がそろう和歌山県内でも栽培が進んでいる。
見た目は一般的なレモンと比べると丸みを帯びた形状。輪切りにしてみると外皮の薄さに驚くと同時に、香りの高さと果汁の多さに気付かされる。皮まで食べられるレモンといわれ、お菓子やジャム作りに重宝される他、一般的なレモンより果汁が2~3割多いことからジュースに使用されることも。酸味よりも甘味が先行する不思議なレモンである。
収穫は10月上旬ごろから。収穫の開始時期は果実が緑色で、12月に入ると黄色のものが出回り始める。果汁たっぷりで魅力的な味わいのマイヤーレモン。ぜひ、食してみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)