右左折や遠隔監視も 和歌山市が自動運転実証

和歌山市役所前を走行する自動運転バス
和歌山市役所前を走行する自動運転バス

和歌山市は29日、市中心部の「けやき大通り」などで自動運転バスの実証運行を開始した。昨年度に続き2度目の実施となり、今回は右左折を含む循環ルートに延長した他、信号の切り替えデータをバスが受信して判断する「信号連携」など新たな実証項目を追加。初日の午前は関係者向けの試乗が行われ、尾花正啓市長は「スムーズで快適に乗ってもらえる。ぜひ近未来の乗り物を体感してもらいたい」と呼びかけた。

人口減少やドライバー不足などにより公共交通の維持は大きな課題に直面しており、自動運転が実現すれば、持続可能な移動手段の確保に大きな貢献が期待されている。

昨年2月に実施した前回の実証運行は直進1・8㌔の片道運行だったが、今回はJR和歌山駅のロータリー内4番乗り場を発着点に、けやき大通りと和歌山城の外周を走り、「和歌山城公園前」と「岡公園前」をバス停とする左回りの循環ルート、約5・3㌔となっている。

運行はNTTビジネスソリューションズ㈱が受託。ドライバーが運転を支援するレベル2での実施は前回と同じだが、右折を伴う三木町交差点では「信号連携」を行い、車両が信号の切り替わりを判断する他、バスに設置されたカメラの映像をリアルタイムで確認する「遠隔監視」の実施、和歌山駅ロータリーに2台のカメラを設置し、車内と監視所で確認することでロータリー内への進入のタイミングなどを判断する「路車協調」を行う点が新たに追加されている。運行支援で和歌山バス㈱も協力している。

使用車両は、フランスのナビヤ社製電気自動車(EV)の小型バス「EVO」。ルートの3Dデジタルマップを基に、GPSで位置測定をしながら走行し、搭載したセンサーで障害物や人の接近を認識する。最大速度は時速19㌔。運転席にはハンドルやアクセル、ブレーキはなく、ドライバーのサポートにはコントローラーを使用する。車両の外装には、紀州てまりをモチーフにした鮮やかなラッピングを施している。

センサーなどの情報を表示する車内の画面とコントローラー
センサーなどの情報を表示する車内の画面とコントローラー

初日の午前9時から、和歌山城公園バス駐車場で出発式が行われ、NTT西日本和歌山支店の岩元豊明支店長は「(システムが自動運転を行う)レベル4の実現、地域課題の解決に貢献していきたい。皆さまに楽しんで乗車してもらいたい」とあいさつ。試乗の第1便には尾花市長や岩元支店長ら関係者が乗り込んだ。

試乗を終えた尾花市長は「安全第一になっており、不安なく乗車してもらえる」と快適性をアピール。「一部区間だけでもレベル4にするやり方もあるのではないか」と述べ、来年度中の実施も視野に模索していく考えを示した。

実証運行は2月9日までの12日間となっている。運行ダイヤは曜日によって異なり、運賃は無料。乗車人数は1回の運行につき事前予約制で9人まで。予約はアプリ「バスきて」をダウンロードして行う。