施設、行政の問題指摘 乳児死亡で検証委が報告書

島本部長㊨に報告書を手渡す森下委員長
島本部長㊨に報告書を手渡す森下委員長

2023年7月、和歌山県田辺市の認可外保育施設で生後5カ月の女児がうつ伏せ状態で意識不明となり、その後、窒息の疑いで死亡した事故を受け、県が設置した有識者による検証委員会は14日、報告書を県に提出した。職員不足が常態化するなど施設の運営体制の不備、指導監督する同市が施設の状況を十分に調査、確認できていなかったことなどの問題点を指摘している。

検証委は昨年6月の設置以降、委員長の森下順子和歌山信愛大学教授はじめ保育、医療、法律の専門家ら5人で4回にわたり開かれた。

報告書によると、事故当時、施設では子ども4人を施設長1人で保育し、複数配置を求める国の基準を満たしていなかった。施設長は、睡眠中の子どもの状態を「5分ごとに目視で確認していた」と説明したものの、記録簿は後日記入していたことが分かっており、確認が実際に行われていたかどうかは不明。事故直近の3カ月を見ても、施設長1人だけで保育していた日が67%に上り、配置不足は状態化していたにもかかわらず、受け入れる子どもの人数は施設長が自ら判断し、報告書は「危機管理に対する意識の低さ、施設長としての責務・役割への軽薄さの表れ」と厳しく指摘した。

一方、田辺市の指導監督状況については、13~15年度の立入調査で職員の配置不足を3年連続で指導していながら、改善勧告など実効性のある措置を検討していたかどうかは記録が残っておらず、報告書は「改善状況を確認していなかった可能性が高い」と問題視した。

さらに報告書では再発防止策として、施設側には、子どもの健康状態などの情報把握の徹底、乳児の睡眠中の事故防止措置の徹底、人的ミスを減らすためのICT機器の導入などを、行政側には、立入調査の確認項目や調査方法の再検討、指導監督の徹底、県による市町村への支援などを提言した。

森下委員長は「和歌山だけでなく全国の保育施設で午睡中の事故が後を絶たない。この事案を教訓として、子どもたちの安心と安全を守る体制がとられることを願っている」と話し、報告書を受け取った県共生社会推進部の島本由美部長は「提言を施設や市町村と共有し、二度と悲しい事故が起こらないように、県としても再発防止にしっかり取り組んでいきたい」と述べた。