対話型で深い学び 野上中に新たな多目的教室

グループで学ぶ生徒ら
グループで学ぶ生徒ら

紀美野町教育委員会は、タブレット端末の整備により活用機会が減った学校のパソコン教室を、生徒たちが自主的に活動できる空間にしようと、野上中学校の教室を多目的教室(マルチユースルーム)に一新した。

全国でタブレット端末の整備が進む一方で既存のパソコン教室の在り方が課題とされていることを受け、町教委は、ことし4月に同校が美里中学校と統合し、紀美野中学校として生まれ変わることを機に整備した。

パソコンを撤去し、五角形の机を導入。グループになって机を組み合わせても対面になりにくく、より活発な意見交換ができるのが特長で、3人、5人と、さまざまなパターンに配置できる。カーペットはグループワークなどで活用できるよう、色を変えたレイアウト。机などの本質的役割にプラスアルファの要素を加え、より自由で創造的、協働的な学習活動ができる空間となった。

県内では五角形の机の導入や整備事例は珍しく、他の自治体にも、空間の特性や今後の活用方法を見てもらおうと、18日には公開授業を実施。紀の川市や海南市の教育委員会関係者らに向け、新しい授業の研究をする和歌山大学の豊田充崇教授が、タブレット端末を使った「STEAM教育」の授業を紹介した。

「STEAM教育」は、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)の五つの分野を横断的に学ぶ教育のこと。

この日は、世界的に有名な絵画をタブレット端末を使って多目的教室内に出現させ、大きさを体感。その他、タブレット端末を、机上に置かれた地球儀にかざすと国旗が浮かび上がり、国旗を押すと、その国の人口や女性議員の割合、ハンバーガーの値段などの概要を見ることができた。

生徒たちは絵画を見る際、空間を生かしながら多目的教室内を移動して学びを深めた。2年の金築由來さんは「これまで資料で調べていた作業が省略されてすごいなと思った」と話し、宇城千晴さんは「五角形の机はグループになっても話しやすくて良かった。楽しく学べた」と笑顔だった。

公開授業の後には研修会もあり、今後の活用方法などについて意見交換した。豊田教授は「通常の教室ではできない使い方が多目的教室ではできる。カーペットを活用し、オープンスペースにもなる。生徒の個性を生かすことができる」と話した。