元ジブリの木原さん ものづくり、名作誕生秘話語る

『となりのトトロ』の制作秘話を明かす木原さん
『となりのトトロ』の制作秘話を明かす木原さん

和歌山市新大工町の大新小学校(松本頼子校長)で7日、スタジオジブリの元制作デスクとして『となりのトトロ』などを手がけた作家の木原浩勝さん(64)が特別授業をした。4年生から6年生までの約70人が、名作映画制作の現場の話に聞き入った。

木原さんと親交のある御坊市の猟具店店主・田嶋由晃さんらが、子どもたちにプロの話を聞いてもらい、将来に夢を持ってもらおうと木原さんに依頼した。2016年に初めて県内二つの小学校で講演し、7日は同校と同市江南の安原小学校で実施した。

木原さんは兵庫県尼崎市出身。1983年にスタジオジブリに入社し、85年に『天空の城ラピュタ』の制作進行を務めた。その後、宮﨑駿監督の下で制作デスクとして『となりのトトロ』『魔女の宅急便』を手がけた。

授業には尾花正啓市長と阿形博司市教育長も参加した。

木原さんは、児童らを近くに集め、さまざまな資料を見せながら、アニメ映画ができる過程や、制作現場の思い出を話した。「トトロ」のキャラクターデザイン考案で、宮﨑監督が実際に描いて木原さんが譲り受けたトトロのイラストを児童に手渡して見せ、「材料は学校にもあるものと全く一緒で、絵の具と筆と普通の紙だけ。自分がやりたいことを一生懸命やると(制作現場と)同じことができます」と話した。映画ポスターの裏話では、制作陣が仕組んだ仕掛けや、込められた願いを明かした。

『魔女の宅急便』の制作時、竹ぼうきを買ってきた木原さんと宮﨑監督との思い出話も紹介。ほうきにまたがって飛ぶように指示されたが、木原さんが「無理です」と断ると、「いいから、飛ぶ努力をしてみて」と頼まれ、飛ぼうとする動作を宮﨑監督が懸命に観察しながら素描したという。木原さんの面白い語り口に、何度も笑いが起こり、児童らは目を輝かせ身を乗り出して聞いていた。

「一番大変だったことは何か」という児童の質問に、『となりのトトロ』で荷物を積んだオート三輪が遠ざかっていく3秒の場面に、CGがなかった当時は4カ月かかったことを打ち明けた。「ありとあらゆる知恵と工夫でその時の一点に全部を懸けた」と、熱意を振り返った。

「(当時の)ジブリは少人数のチーム。1人欠けても駄目で要らない人材は一人もいない。『誰も取りこぼさずみんなで一緒にやろう』と、背景を描く人、色付けの人、撮影担当などさまざまなスタッフがお互いできることで補い、総力を挙げてものをつくる。それがものづくりです」と強調。さらに「心の強さ、頑張る努力があれば君たちの年でも関係ない。なりたいものに必ずなれる。諦めたら駄目です」と激励した。

5年生の李宥依さん(11)は「話が面白くて、ポスターの話が心に残った。大人になった時に大事なことを知れた」、西本橘平さん(11)は「自分の夢を諦めず、最後までやり遂げるのが大事と思った」と話した。