南葵発信へ寄付演奏会 とらふすクラシック400回記念

本紙毎週木曜掲載のコラム「とらふすクラシック」の連載400回記念寄付コンサートが20日、和歌山市七番丁の和歌山城ホールで開かれた。紀州徳川家第16代当主・頼貞が収集した「南葵音楽文庫」の魅力を発信する演奏会を、頼貞ゆかりの東京都内の会場で実施するための支援を募ったもので、和歌山ゆかりの音楽家11人がボランティアで出演し、約200人が来場した。
東京で実施する演奏会「パーセルに向けたブリテンのまなざし」は、南葵音楽文庫の重要なコレクションの一つ「カミングス文庫」に収められたイギリスの作曲家パーセルの楽譜資料に焦点をあてたもので、2月に同市の県立図書館で行った公演の再演。10月2、3日、台東区の旧東京音楽学校奏楽堂で行う。
同施設は、東京藝術大学音楽学部の前身、東京音楽学校の施設として明治23年(1890)に建設され、現在は重要文化財。ホール内のパイプオルガンは、大正9年(1920)に頼貞が日本初の音楽専用ホール「南葵楽堂」のためにイギリスから購入し、昭和3年(1928)に東京音楽学校へ寄贈した。
東京公演には、和歌山公演に出演した金子美香さん(メゾ・ソプラノ)、金谷幸三さん(ギター)、宮下直子さん(ピアノ)に、東京藝術大学前学長、県立図書館音楽監督の澤和樹さん(バイオリン)が加わる。
今回の寄付コンサートの出演者は、木谷悦也さん(ピアノ)・宝子さん(ボーカル)、南方美穂さん(クラリネット)・中川千絵さん(ピアノ)、瑞樹比美香さん(ソプラノ)・小川友子さん(ピアノ)、北島佳奈さん(バイオリン)・湯川美佳さん(ピアノ)、金谷さん、澤さん・宮下さんの6組11人。
会場には、県立図書館の協力で、南葵音楽文庫の魅力や重要なコレクションについて紹介するパネルも展示された。
開演にあたり、コンサートを主催した実行委員会の岩橋和廣さんが「徳川頼貞は、日本の音楽の発展のために、多大な資産を使って世界中がびっくりするような音楽の資料を収集した。和歌山の殿様が日本のためにやってきたことを、和歌山の人として応援しないわけにはいかないとの思いでいる。音楽文化を自分たちのものと思って、応援してほしい」とあいさつ。和歌山新報社の津村周社長が祝辞を述べた。
コンサートは、1組約30分の演奏のリレーで進んだ。南葵音楽文庫が貴重な楽譜を所蔵するベートーベン、頼貞と親交があったサン=サーンス、プッチーニをはじめ多彩な作品が演奏され、来場者は聴き入った。
最後の演奏が終わると、出演者が再び舞台に登場し、会場は大きな拍手に包まれた。澤さんがあいさつし、「南葵音楽文庫は世界に誇れるもの。より多くの皆さんに知ってもらいたい。先人が残した素晴らしい音楽を聴いていただこうと不断の努力をしている演奏家を、皆さんで押し上げていただければありがたい」と聴衆に呼びかけた。

「とらふすクラシック」の連載開始は2017年4月。南葵音楽文庫が県に寄託され、里帰りしたことをきっかけに、虎伏城の別名を持つ和歌山城下で行われるコンサートにもっと足を運んでもらおうと始まり、出演者自身がプログラムに込めた思いや演奏への意気込みなどをつづるスタイルで好評を博している。