植えた木から漆を採取 根来塗曙山会が初鎌入れ

根来寺根来塗の室町時代の技法を復興した池ノ上辰山(しんざん)さんが代表を務める根来塗曙山会は5月31日、和歌山県岩出市の「根来山げんきの森」内に植えた漆の木から、ことし初めて漆を採取する「初鎌入れ」を行った。
同会は、和歌山産の漆で根来塗を作ろうと、2007年に園内に50本の苗木を植樹。下草刈りやツル切りなどで手入れを続け、21年に初めて漆が採れるまでに成長。昨年は5本から20ccほど採取できている。
今回は、約10人の弟子たちと共に作業。最初に池ノ上さんが鎌で幹の皮をはぎ、専用のカンナで傷を入れる「初鎌入れ」をした。
傷口からうっすらにじみ出てきた漆は、鼻を近づけるとほんのりと甘い香りがする。弟子たちは自然の循環のありがたさを感じながら、漆を一かきずつ丁寧に集めていった。
作業は今後2週間おきに行い、9月までに8、9回続けるという。
根来塗を学んで5年の水城妙子さん(56)は「ことしの漆は葉に勢いがあって去年より元気。1本からほんの少ししか採れない漆の貴重さを毎年実感している」と話す。
ことし初めて漆を採ったという明治裕子さん(65)は「じわっと出てくる漆を見て、木が生きているということを改めて知り感動した」と笑顔。
採取した漆は、干して天日の下、手作業で攪拌(かくはん)し、水分を取り除く昔ながらの「手黒目」という作業を経て完成する。
池ノ上さんは「日本で流通する漆のほとんどは外国産で、国産漆の生産は年々減少し、不足している。ここでより多く採取できるようになれば」とし、「根来塗は漆を何度も塗り重ねていき、26もの工程を経て完成する。今はここで採れた漆を2~3割の作品に最終工程で使っているが、今後は全工程で使えることを目指している」と話していた。