近大生考案、ゲーム形式で 海南で夜間避難訓練

近畿大学生物理工学部の4年生、北原剛志さん(21)が、考案したゲーム形式の夜間避難訓練が、和歌山県海南市冷水地区で行われ、参加した住民らは夜間の高台への避難を通じて防災や共助の意識を高めた。

北原さんは同学部人間環境デザイン工学科に通い、福祉デザインや建築を学ぶ。今回の避難訓練は卒業論文のための研究の一環で企画され、地域の特性を踏まえ、地域全体の共助意識の向上と防災力の強化を目指し、幅広い年代の住民が参加でき、住民同士が協力できるようゲーム形式にした。
神戸市出身の北原さんは、幼い頃から阪神淡路大震災を教訓に、災害や防災に関する教育を受け、大学のゼミでは、空き家や防災に関する研究をしている。
所属するゼミの林和典助教とつながりがある冷水地区にことしの2月に訪れ、同地区で空き家の改修などの活動をする伊藤智寿さんと出会い、同地区でのプロジェクトやイベントなどを通じて住民と交流するうち、「縁あって関わった人を自分の力で守れないか」と研究テーマと拠点を同地区に決め、6月に移住した。
北原さんの研究テーマは「空き家の有効活用」。同地区は約380人が暮らし、22㍍の高低差がある斜面に家が並ぶ漁村地域。南海トラフ巨大地震の発生時には最大8㍍の津波が来ると想定されている。高齢化が進み、空き家も増え、道幅が狭く密集地で災害リスクが高い。3年前の記録では、全約350戸のうち空き家は35戸だったという。
今回の避難訓練は「夜の訓練をしたい」という住民の声を受けて企画。津波を想定し、より実践的な体験をしてもらおうと、避難ルートには倒木や落石、道路崩壊など危険箇所を設置し、それをミッションとして回避しながら避難してもらった。
10~80代の26人が異世代のチームに分かれ、代表者は頭にカメラを着けて映像や会話を記録した。また、1人を負傷者役に設定し協力しながら取り組んだ。
訓練はスコア制で、到着順位や危険箇所の発見数に応じて加点。持参した災害救援グッズを使って対応しながら進み、装備不足やルール違反には減点が課せられた。
堤防が崩れ、道が閉ざされてしまった場所では、崩落を見つけ迂回するチームや、気が付かないチームもあった。
北原さんは「たくさんの人が集まり、前向きに取り組んでくれた。共助や防災意識を高めてもらえるよう今後も続けていきたい。避難所も小さく、多くの人が避難できない。空き家を避難所として活用できたら」と話す。
今後は土地構造を調べ、1軒ずつ空き家かどうかを調査して地図を作り、訓練などを通じて住民と協力し、減災力を高めるマニュアルを作成して他の地域にも活用できるようにする。