岡田全司さんら受賞 25年度県文化表彰に6人


文化芸術や学術の向上、発展に貢献した人、将来一層の活躍が見込まれる人に和歌山県が贈る2025年度県文化表彰の受賞者6人が決まり、「文化賞」には湯浅町出身の医学者、岡田全司(まさじ)さん(76)=堺市=が選ばれた。表彰式は2月2日、県庁正庁で行われる。(受賞者の年齢は表彰式現在、写真は県提供)

「文化功労賞」は日本史学者の栄原永遠男さん(79)=大阪府豊中市=、植物生態学者の髙須英樹さん(77)=和歌山市=、「文化奨励賞」は生命科学者の今吉格(いたる)さん(45)=大阪府高槻市=、クラシックギター奏者の金谷幸三さん(59)=和歌山市=、ユーフォニアム奏者の小寺香奈さん(48)=和歌山市=に贈られる。

文化賞の岡田さんは「私の長年の研究に対する故郷からの評価、誠に光栄に存じます。私は結核やがんの治療に最も重要なT細胞の分化・活性化を世界に先駆けて発信し続けてきました。多くの共同研究者に深謝いたします」とコメントしている。

受賞者の主な経歴と功績は次の通り。



【岡田全司さん】1949年、湯浅町生まれ。県立医科大学を首席卒業後、大阪大学大学院などを経て、米国留学中に、がん細胞や結核菌などを死滅させるキラーT細胞を活性化させる因子を世界に先駆けて発見した。帰国後は世界初のヒトT細胞ハイブリドーマ作製やB細胞分化因子の発見など、免疫学の進展に寄与。結核ワクチン開発でも顕著な功績を挙げ、多剤耐性結核への臨床応用にも成功した。世界保健機関(WHO)の新結核薬委員を務めるなど国際的に評価が高く、県内でも国立病院機構和歌山病院への指導を通じて地域医療に貢献している。

【栄原永遠男さん】1946年、東京都生まれ。京都大学大学院を単位取得退学後、大阪市立大学教授などを歴任した日本古代史研究者。正倉院文書や木簡の研究で知られ、特に『和歌山県史』編さんにおいて、古代の紀氏や紀伊国の政治・経済状況などの執筆を担当し、学術面から県の文化振興に貢献した。退職後は東大寺史研究所長や大阪歴史博物館館長を務める他、皇居での2024年の歌会始の儀には召人(めしうど)として参列。著書に『紀伊古代史研究』などがあり、現在は大阪市立大学名誉教授などを務める。

【髙須英樹さん】1949年、東京都生まれ。京都大学大学院博士課程を中退後、和歌山大学教授や県立自然博物館館長を歴任した植物生態学者。県の植物分布に詳しく、『和歌山県レッドデータブック』の作成・改訂や「生物多様性和歌山戦略推進調査会」での座長・部会長としての活動を通じて、県内の貴重な自然の把握と保護・保全に尽力した。現在は和歌山大学名誉教授、非常勤講師を務める傍ら、地域の生物観察会で県民に自然の魅力を伝える活動を続けている。

【今吉格さん】1980年、宮城県生まれ、橋本市育ち。大阪大学卒業後、京都大学大学院で博士号を取得。脳神経系の生命科学者として、成体脳における「ニューロン新生」と呼ばれる現象の役割の解明や、光を用いた神経幹細胞の操作技術の開発などで世界的成果を上げており、神経疾患や認知症治療への応用が期待されている。若手研究者支援プログラムへの採択や数々の受賞歴を持ち、現在は京都大学大学院生命科学研究科付属生命情報解析教育センター教授などとして活躍している。

【金谷幸三さん】1966年、神戸市生まれ。パリ国立高等音楽院でアレクサンドル・ラゴヤ氏らに師事したクラシックギター奏者。パリ国際音楽大学を首席卒業後、帰国。現在は和歌山市を拠点に、珍しい11弦ギターの演奏やアルバム発表、デュオ「黒江万金堂」など多岐にわたる活動を展開している。ギター教室の主宰や「和歌山KIDSギタークラブ」講師として後進の育成にも尽力し、卓越した技術から生まれる情感あふれる演奏で、地域文化の向上に貢献している。

【小寺香奈さん】1977年、大阪府生まれ。東京藝術大学大学院修了。埼玉県警察音楽隊などを経て、現在は和歌山大学教育学部准教授を務めるユーフォニアム奏者。各地のオーケストラや吹奏楽団への客演の他、現代音楽分野での活動を通じ、楽器の新たな表現と可能性を探求している。リサイタルシリーズの開催や、美術館でのコラボレーション、地元小学生との創作ワークショップなど、分野横断的な試みや教育活動を積極的に展開し、県の文化振興に寄与している。