雛に宿る親心今も 山﨑邸で時代つなぐ雛祭り

和歌山県紀の川市粉河にある国の登録有形文化財「山﨑邸」で、江戸時代から平成までの雛人形約500点を展示する「山﨑邸の雛祭り」が開かれている。21日までの木・金・土曜日。
並ぶ人形は、各家庭で飾られなくなったものを「捨ててしまうのは忍びない」と寄付で集まったもの。かつて地域で親しまれた行事の志を引き継ごうと、地元のボランティア団体「粉河雛飾りでつなぐ会」が企画した。
背景にあるのは、2015年から10年間にわたり、門前町一帯を彩った春の風物詩「粉河とんまか雛通り」。24年に惜しまれつつ終了したが、当時の実行委員会メンバーら女性8人が「粉河を元気にしたいという思いの灯(ともしび)を消したくない」と同会を結成。現在は計800体以上の人形を大切に保管しており、今回の展示では、メンバーが4日間かけて丁寧に準備を整えた。
寄贈された人形には一組ごとに刻まれた物語がある。昭和24年(1949)に東京の銀座三越で購入されたという、戦後復興期の希望が詰まった雛飾りもある。また、学問の神様に子の未来を託し、お雛様と一緒に天神さんを飾る「天神雛(てんじんびな)」など、親から子への願いが込められた人形が並ぶ。
江戸末期の「古今雛」は目に水晶やガラス玉が埋め込まれ、差し込む光を受けて「眼球」が輝く独特の表情が見どころ。
古い雛飾りでは、向かって右に男雛、左に女雛が座る「古式」の並びになっており、現在の一般的な飾り方と比較する楽しみもある。
代表の東美保さん(67)は「家で飾るのが難しくなった人形たちも、ここで再び命を吹き込まれる。毎年飾ることで人形への愛着も深まっていく」と話す。
会場の山﨑邸は材木商として知られた山﨑家の旧邸宅で、1917年に建築された近代和風住宅。歴史を刻んだ空間と人々の思いが詰まった雛人形が調和し、まるで時代を遡ったかのような雰囲気を醸し出している。
公開は、同邸内の「創カフェ(HAJIME cafe)」営業日である木~土曜日の午前11時~午後3時。入場無料。
問い合わせは同会(℡0736・60・8233)。


