話せなかった経験を今 青年団体と東北の交流15年

宮城県石巻市の遠藤孝一さん(66)と、和歌山市の青年団体の有志は長年にわたり交流を重ねてきた。和歌山のメンバーは震災後、毎年、年の瀬に石巻と仙台市に有田みかんを届け、現地で「運動会」を開く。中心メンバーの高垣晴夫さん(63)は「笑顔が戻り、みんな少しずつ元気になってきた。将来被災するかもしれないまちのために、15年がたった今、やっとつらい体験を話せるようになってきた」と話す。
東北と交流するのは、和歌山市青年団体協議会(上山哲平会長)のメンバーら。きっかけは2011年12月、以前から高垣さんと更生保護活動でつながりのあった遠藤さんにストーブを届けたこと。震災後、遠藤さんと連絡が取れなくなり、心配していたがテレビのニュース映像で遠藤さんが映ったことで、避難所に問い合わせ、6月ごろに無事が確認できた。
以来、毎年年末にはメンバー数人が東北へ出向き「食べて、動いて、参加して」をモットーにした「みかん狩り運動会」を開いている。景品はミカン。手でむき、その場ですぐに味わうことができ、喜ばれている。
「和歌山のミカンは人を励まし、笑顔にする。ミカンが持っているパワーを感じた」と高垣さん。運動会は「遠くの親戚に会いに行く」恒例の行事になっている。
購入したものや農家からの寄贈を含め、昨年末に贈ったのは1・3㌧。メンバーの子どもの小学生2人を含む7人が東北へ向かい、両市での「運動会」には計約190人が参加した。遠藤さんは「毎年、石巻の人たちは有田みかんを楽しみにしている。寒い冬も、頑張って乗り切ろうという気持ちになる」と感謝する。
南海トラフを震源とする巨大地震の発生が懸念されている和歌山でも、津波防災を啓発しようと、メンバーは2017年、和歌山市の片男波海水浴場に、予想される津波の高さを示す看板を設置した。また同団体の仲介により、稲むらの火の館(広川町)が石巻市の旧大川小学校にサルスベリの木を寄贈・植樹するなど、次の世代につなぐ試みも行われている。
重いはずの口を開き、被災体験を話した遠藤さんは「これまでに頂いたご恩へ感謝の気持ちを込めて、いま伝えておかないと、と思った」と話す。
高垣さんは「いずれ、われわれも助けてもらうことになるかもしれない。大切なのは人と人との交流。つらく悲しい体験を話すことで、少しでも楽になったり、自身の励みになったり、乗り越えられる部分もあるのではと新しい力を感じる」と話している。


