廃棄ゼロの「循環型」農業 紀美野の吉瀬夫妻

きみのフルーツの雄也さん㊧とりえさん
きみのフルーツの雄也さん㊧とりえさん

和歌山県紀美野町でハッサクなどの果樹栽培と加工品の開発・販売を行う「きみのフルーツ」の代表の吉瀬雄也さん(44)、りえさん(49)夫妻が、栽培と加工・販売を夫婦で完全に分業する形態の農業に取り組んでいる。

夫妻は2017年、東京から雄也さんの母方の実家である同町へ移住し、新規就農した。雄也さんは大阪出身、りえさんは東京生まれの東京育ち。

雄也さんは東京大学を卒業後、民間企業に勤めていたが、約10年前に親戚の高齢化に伴い、農地を引き継ぐ形で就農を決意。当時、りえさんは気象キャスターとして気象会社に勤務し、当初は移住に反対していたが、自身のキャリアや子育て環境を見つめ直す中で、「やり方次第で、これまでの経験を生かせて面白いかも」と農業に可能性を見いだし、挑戦を決めた。

経営においては役割を明確に分担している。雄也さんが約1・8㌶の農地でハッサクを中心にミカンや梅などを育て、栽培や出荷を一手に担う。

一方、りえさんは加工品の開発、製造、情報発信、EC販売を担当し、栽培と加工・販売を混ぜない「完全分業」としている。

雄也さんは「基本に忠実であること」を掲げ、土作りや剪定(せんてい)、摘果作業といった基本工程を丁寧に行い、ハッサク本来の甘みや酸味、ほのかな苦みが調和した奥行きのある味わいを追求する。

りえさんは、「どんな思いで手に取るのか」を思い描きながら、鮮度が高く、持続可能にこだわった商品を生み出している。ハッサクジュースの製造過程で残る皮も捨てることなく、ピールや生チョコレート、ジャムなどの商品へ展開し、廃棄を出さない循環型の商品作りを徹底している。

ハッサクジュースは、1本にハッサク6個分が入ったぜいたくな味わい。1本ずつシリアルナンバーが記載され、その年の味が楽しめる工夫がされ、生チョコは、ベルギー産のホワイトチョコレートに独自製法のハッサクピューレを合わせた、珍しい組み合わせが楽しめる。

パッケージの「8℃」には、鮮度を保つために適した温度であり、無限を意味する「∞」から「ずっと続いていく農業を目指したい」との思いを込めた。

雄也さんは「初めは、一回やってみようという軽い気持ちだった」と振り返り「今では農業にはまっている。自然相手は思った通りにならず、難しいのが面白い。日々の作業成果が目に見え、小さな達成感がある」と話している。

りえさんは「自分の手で作った商品を百貨店などで直接手渡し、お客さんの喜ぶ表情や反応をダイレクトに感じられることにやりがいを感じる。アイデアも対話から生まれることもある」と笑顔。

2人は今後について「ハッサクといえば『きみのフルーツ』と認知されるブランドに育てたい。県産フルーツの魅力と付加価値の発信を続けていく」と話している。

きみのフルーツのハッサクは、主にECサイトから購入できる。一部、近鉄百貨店和歌山店の「紀州路」コーナーに並ぶ。

ハッサクのおいしさを追求する雄也さん
ハッサクのおいしさを追求する雄也さん