大役に充実のランナー 沿道に感動広がる
コロナ禍での五輪開催は賛否が分かれているが、聖火リレーは、沈みがちなまちに久しぶりの高揚感をもたらした。聖火をつないだランナーの多くは「すがすがしい気持ち。あっという間だった。沿道の笑顔が力になった」などと大役を果たした充実感を語った。
2日目の出発式が行われた和歌山市の和歌山商工会議所前では、尾花正啓市長が「ふるさと和歌山市に元気と喜びを伝えていただき、聖火の希望の光が全国につながることを願う」、井上直樹市議会議長が「オリンピックレガシー(遺産)としてスポーツの振興が市民に広がると思う。よりスポーツに励める環境づくりに取り組んでいきたい」と述べ、五輪がまちに及ぼす波及効果に期待した。
10日の第1走者、ロンドン五輪体操銀メダリストの田中和仁さんは、前日に走った妹の理恵さんから「200㍍を楽しんで」と応援されたという。走り終え、「聖火ランナーをしなければ味わえない体験ができた」と話すとともに、「選手はオリンピックに向けてしっかり準備している。大会期間中は良いパフォーマンスで、良い成績が残せるように頑張ってほしい」と後輩のアスリートにエールを送った。
紀の川市を走った山添利男さん(75)は、1964年の東京五輪に続き人生2回目の聖火ランナーを経験。「東京五輪の2回目の聖火リレーを走ることが現実になりました。とても名誉なことです。楽しく走ることができました」と喜び、笑顔で沿道に応えながら一歩ずつコースを踏みしめた。
9日に和歌山市―海南市を走った和歌山市の中学生、渕野友愛さん(13)は「手を振って走ったのは初めてで、良かったです。こんな経験は一生できないので楽しかった」と生涯の思い出になった様子。10日に和歌山市を走った島精機製作所社長の島三博さんは「スタートは緊張したが、走り出したら沿道の応援もあり楽しく走れた。元気を与えられるオリンピックになってほしい」と話した。
オリンピアンの西口美和子さんは「こんな状況の中、走らせてもらったことに感謝している。気持ちよかった。もう一度走りたい」と笑顔を浮かべた。
沿道にも感動が広がった。西口さんの高校時代の同級生、徳図千浪さん(48)は「(西口さんの)オリンピック出場の時もうれしかったが、今回はそれ以上。この年齢になってこんなに興奮するなんて。元気をもらいました」と涙ぐみながら語った。
聖火リレーは今後も全国で続き、大会本番へと近づいていく。田中理恵さんは「みんなでつくっていくオリンピック、パラリンピック。いろんな意見がある中ですが、選手が輝ける環境をしっかりサポートできれば」と話していた。