眠る人の叫び語り継ぐ 和歌山大空襲76年

和歌山大空襲から76年を迎え、和歌山市戦災死者追悼法要が9日、西汀丁の汀公園戦災死者供養塔前で行われ、戦没者を弔い、平和への思いを新たにした。

同市は太平洋戦争中にアメリカ軍から十数回の空襲を受け、約1400人が犠牲になった。中でも1945年7月9日から10日未明にかけての大空襲では中心部が焼け野原となり、火災や熱風から避難してきた人々が集まった同公園では、最も多い748人が火災旋風などで亡くなった。

法要は市戦災遺族会の主催で毎年行われている。新型コロナウイルス感染防止のため、昨年に引き続きことしも規模を縮小。現在約80人いる遺族会から、役員7人のみの参列となった。

市仏教会の僧侶6人が、花びらをかたどり浄土などが描かれた紙をまく散華の後、経を唱える中、参列者は一人ひとり戦災死者の霊に鎮魂の祈りをささげながら焼香した。

市仏教会の田中恵紳(えしん)会長は、自身の祖父が76年前のこの日、寺の入り口に今もあるクスノキの下に隠れて身を守りながら、寺が燃え尽きてしまうのを眺めていたと話し、「7月9日は市民にとって忘れてはいけない日であり、二度と起こさないためにも100年、200年後も誓いの日を続けなければならない」とあいさつ。

遺族会の田中誠三理事長は「ここに眠る人の思いや叫びを、緊張感を持って伝えていかなければ」と思いを改めていた。

遺族会の役員を務め、3年前に亡くなった山路日出男さんの写真を手に参列した、湯浅町の山路崇子さん(74)は、同空襲で母と姉を亡くした夫の日出男さんと共に毎年参列しているといい、「ずっと一緒にお参りしようという主人との約束をことしも守れて良かった」と話し、「きっとニコニコ喜んでくれていると思う」と話していた。

例年、法要の際に奉納している千羽鶴の作成には市立八幡台小、野崎西小、伏虎義務教育学校、和歌山大学付属中学校の4校の生徒が参加し、法要の前日に奉納した。

日出男さんの写真を手に焼香する山路さん

日出男さんの写真を手に焼香する山路さん