最優秀賞に和田雄次さん 全日本YPC展
全国の写真愛好家でつくる読売写真クラブ(YPC)の合同展「2021全日本読売写真クラブ展」(個人部門)の最優秀賞に、和歌山市和歌浦東の和田雄次さん(72)の「朝日のあたる漁村」が選ばれた。応募作約1600点の頂点に輝いた和田さんの作品は、太陽に照らし出された同市雑賀崎の集落を写したもの。和田さんは「地元を撮ったもので評価を頂き、最高にうれしい。舞い上がっています」と喜びいっぱいに話している。
撮影したのは、海岸線の斜面に家が密集して建ち並ぶ景観が、イタリア南部の景勝地に似ているとして、近年「日本のアマルフィ」とも呼ばれている場所。昨年9月27日午前6時51分、雑賀崎漁港から田ノ浦漁港に通じる道路に架かる奥和歌大橋の歩道から撮影した。
和田さんは早朝の散歩を日課にし、朝焼けも多く撮影。この日は厚い雲に覆われ、時折雨もぱらつく天候だったが、「もしこの雲の切れ間から家並みに太陽が差し込めば、面白いものが撮れるだろうな」と思い、狙いを定めたポイントで、イメージを湧かせながら待った。約30分後、待望の朝日が東の雲間からゆっくりと顔を出し、斜面の家々を照らしながら丘陵地が美しく浮かび上がる瞬間を捉えた。
光が差したのはほんの一瞬の出来事で、シャッターを切ったのは3回。すぐにカメラの画面で鮮明に写し撮れたのを確認し「『やった』と思いましたね。待ったかいがあった。狙った通りでした」。
普段から、スマートフォンの専用アプリで日の出や日の入り時刻を確認。太陽が出る時間や方角を計算し、一番美しく撮れる瞬間を狙うという。審査を担当した写真家の立木義浩さんは「順光線であからさまなのに抒情的」と講評を寄せている。
元県職員。若い頃からカメラが趣味で、本格的に始めたのは50歳を過ぎてから。2012年に和歌山YPCに入会した。翌年からYPCのコンテストに応募し、8年連続で入選している。
見た人の心に残る写真を撮りたいと、さまざまな被写体を追ってきた。高野山へは毎月通って撮影し、紀州よさこい祭りは、同フォトコンテスト入賞者の常連。地元ボランティア「わか応援隊」で、和歌浦の記録を残す活動にも携わっている。
今回の栄誉に「全国の人に雑賀崎を知ってもらい、和歌山のPRになればうれしい」とほほ笑み、「これからも人の心に訴え掛けるような一枚を探し続けていきたい。あまり無理をし過ぎずに、緩やかに写真を楽しみたいですね」と話している。
和田さんの作品を含む入賞作は東京(26日まで)と大阪(9月17日~23日)の富士フィルムフォトサロンで展示される。