卵円孔開存症 県内初カテーテル治療に成功
和歌山県立医科大学は26日、心臓の右心房と左心房を隔てる壁の間にある小さな穴(卵円孔)が開いた状態になっている「卵円孔開存症」について、カテーテルを使って閉鎖する治療に県内で初めて成功したと発表した。従来の開胸手術に比べて体への負担が大きく軽減され、脳梗塞などの原因となる同症の新しい治療法として、県内での普及が期待される。
同大医学部内科学第4講座(循環器内科)の田中篤教授、和田輝明助教が同大で記者会見した。
卵円孔は胎児の間は開いており、生後数日で自然に閉じるが、成人になっても隙間が開いている例が20~30%程度みられる。通常は開いていても問題はないが、静脈にできた血栓が動脈に流れ込み、脳梗塞を起こす「奇異性脳塞栓症」の原因として、卵円孔から血栓が流れ込むことがまれにある。
カテーテルによる手術は、足の付け根から血管にカテーテルを挿入し、右心房と左心房を隔てる壁の隙間を形状記憶の2枚のディスクで挟んで固定するもの。手術は1時間程度で終わり、術後数日で退院できる。
従来の手術は、開胸し、人工心肺への接続など3~4時間を要し、術後も2週間程度の入院が必要だった。新しい治療法により患者への負担は小さくなり、11日に県内で初めてカテーテルによる治療を受けた患者も、経過は良好という。
田中教授によると、原因不明とされている脳梗塞のうち、一定の割合が卵円孔開存症によるものと考えられる。脳梗塞を繰り返し、まひなど体への影響が悪化してしまう患者がいる現状があるが、卵円孔開存症が原因であれば、軽いまひなどの症状のうちにカテーテルで治療し、脳梗塞の再発を防ぐことができる。
同大は、脳梗塞の原因が卵円孔開存症ではないか診断できる専門の外来設置を検討しており、田中教授は「脳梗塞を繰り返し、生活の質が低下して苦しんでおられる患者さんは少なくない。体への負担が小さいカテーテル治療で2回目を防ぐことができれば、大きなメリットがある」と話している。