米田に期待 御坊商工の元エース薮さん
春のセンバツに出場の和歌山東と市和歌山は、麻田一誠と米田天翼(つばさ)の両右腕の力投で初戦を突破した。和歌山東は2回戦では敗れたが健闘が光った。同じ熱気は41年前の春、御坊商工(現紀央館)の8強進出でもあった。その立役者が同じ右腕エースで、現在は和歌山市議会副議長の薮浩昭さん(58)。愛知の大府からプロ野球巨人に入団し、完全試合を達成した槙原寛己氏に投げ勝ったのは今も語り草。薮さんに〝後輩″の両右腕の印象や今後の活躍について聞いた。
――和歌山東と市和歌山の両エースの印象は
横手投げの麻田は技巧派、甲子園でMAX145㌔の米田は本格派と違う印象を受けたが、これだけの素質の投手が県勢に2人もいたのが頼もしかった。
初戦の麻田は低めを意識して内外角に散らした冷静な投球。米田は球こそ上ずっていたが伸びのある直球がすごかった。初回に花巻東の佐々木麟太郎を三振に仕留めた球だ。甲子園で発揮できたことは本人も大きな自信を得たはずだ。
――経験者として甲子園のマウンドはどうだったか
私は3回先発として上ったが、いずれもマウンドに立った瞬間、武者震いした感覚を今でも覚えている。あのマウンドはすり鉢状の球場で、集まった観客の視線が一気に注がれる。
しかし、今までの練習が自信になっていたので緊張は特にはしなかった。初戦は大会ナンバーワンといわれた左腕擁する福島商(2―1で勝利)が相手だった。気後れは決してしなかったが、振り返ると、重圧は十分に感じていたように思う。
魔物が棲(す)むとさえいわれるのが甲子園のマウンド。麻田、米田が堂々の投球を披露してくれたのは、甲子園の先輩として本当にうれしかった。
――市和歌山の次戦は茨城の明秀日立。エース米田への期待は
甲子園に出るまでは自分は直球主体の本格派投手と思っていた。しかし、ベスト8を懸けて戦った槙原の剛速球を見て「こんな怪物に比べたらひよっ子だ」と思い、認識を変えた。
あの試合は雨の中での対戦で、自分は気持ちを切り替えて制球重視の投球を心掛けた。それが結果的に完封につながったと思う。逆に、槙原氏は悪条件下で本来の力を出せなかったのかもしれない。
米田も雨の中で投げる機会があるかもしれない。私とは違って、最後まで自分の直球を信じて投げてほしいと願う。直球を究めることこそが夏への大きな糧となり、次のステップにつながる近道だと思うからだ。
私もそうだったが、帰ってくれば地元の人々の温かい言葉が待っている。とにかく、最後まで全力を出し切り、悔いなく戦ってほしい。