矢野教諭が優秀賞 AR活用授業の教育論文で
全国の小中学校などで働く教員から教育実践論文を募る「第37回東書教育賞」の優秀賞に、和歌山大学教育学部付属中学校(和歌山市吹上)の矢野充博教諭(46)の論文『中学校理科における気象現象の理解を深めるARの積極的活用』が選ばれた。県内で優秀賞の受賞は初となる。
同賞は、東京書籍と中央教育研究所が主催。本年度は、「未来を担う子どもと共に歩む確かな教育実践」をテーマに論文を募集したところ、全国の小中学校教員と教育関係者から140編が集まったという。
中でも矢野教諭の論文は、教諭や生徒自身が作成したAR(拡張現実)を活用し、空間的な動きについて理解を促進した実践が高い評価を受け、中学部門で唯一の優秀賞に輝いた。矢野教諭が同企画に応募するのは12年ぶり、2回目。前回は奨励賞に選ばれている。
今回の論文には、中学2年の理科の単元「気象現象とその利用」で自身が作成したARコンテンツを活用した授業実践の他、同学習後の定期テストの正答率や生徒アンケートの結果から、ARを活用した学習は図や写真では理解が難しい空間的な構造や動きを捉えることに役立ち、自然現象の深い理解につながることが分かったことなどが述べられている。
同校の校長室で贈呈式が行われ、主催の担当者から矢野教諭に、賞状と副賞の目録、審査員の講評をまとめた映像が贈られた。
矢野教諭は受賞に「うれしい」と笑顔。AR活用授業については今後も続けていくとし、「教科書の図や写真など、平面の情報から雲の様子を想像してただ覚えるのではなく、ARを使って立体的な動きを擬似的に体験しているからこそ理解しやすい」と手応えを語った。
また、生徒らに対して「ARやVRが一般的になっていく世の中で、消費者側ではなくクリエイトする側として、ARを活用して学んだ経験を生かして、自分のアイデアを伝える時の一つのツールとして使ってもらえれば」と願っていた。
同校の北垣有信校長は「20年前に同僚として働いていた頃から『日本一の教師になる』と言っていた矢野教諭は有限実行の男」とたたえ、「研究の柱を担ってくれ、今後も大きな期待をしている」と笑顔で共に受賞を喜んだ。