県内で栽培される「サンフルーツ」
前号では、木成り栽培され、果皮や果肉が赤味を帯び、濃い甘さの中にあるまろやかな酸味が特徴の「紅甘夏」を取り上げた。甘夏の枝替わりとして発見された品種が他にもある。今週は「サンフルーツ」を紹介したい。
サンフルーツは1962年に熊本県芦北郡の農園で発見された品種。「さんさんと降り注ぐ太陽」という意味から付けられたという。主に愛媛県で流通するものは「サンフルーツ」、和歌山県では「田の浦オレンジ」、静岡県では「ニューセブン」と呼ばれ、地域によって名称が異なるのが面白いところ。
大きさは、甘夏や紅甘夏と同程度。外皮は甘夏と比べると滑らかで、見た目はグレープフルーツのよう。甘夏よりも甘さがあり、酸っぱさは程よい程度と、甘過ぎず、酸っぱさもあるバランスの取れた味わいを楽しめる。
外皮が硬くむきづらいため、ナイフで切り込みを入れてむくのがおすすめ。種がやや多いものの果肉をそのまま食べることができる。デザートとして食べるのも良いが、甘味と酸味のバランスの良さからサラダやあえ物としても使われる。
酸味の成分であるクエン酸の他、ビタミンB1やB2も豊富に含まれるため、疲労回復など体調を整えるのに適している。気候の変化があるこの時期にぜひ食べたい逸品である。
気になるのは、なぜ和歌山県で栽培されるサンフルーツに「田の浦オレンジ」という名が付けられたのか。発見された熊本県芦北郡に「田の浦」という地名があるのが由来であるのか、それとも、和歌山市の「田の浦」に関係するのか、さまざまな文献を探したが、真相を突き止めることはできなかった。
田の浦オレンジの名で流通するサンフルーツ。謎多い柑橘(かんきつ)を手に取ってみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)