島本さん初句集 海外の思い出など227句

和歌山市島橋東ノ丁の島本もとりさん(80)が、海外の旅の思い出などを詠んだ俳句227句を収めた初の句集『子午線0』を完成させた。島本さんは「80歳で自分の記録となる句集を出せたことはうれしい」と傘寿(さんじゅ)の節目の出版を喜んでいる。

いけばな草月流の理事としても活動する島本さんが俳句を始めたのは5年ほど前。「海外の旅の記録を俳句で残したい」と、本紙俳壇の選者も務める俳人の桑島啓司さんに師事し、桑島さん主宰の滝山俳句会に所属しながら、一日一句を目標に句作に励んでいる。

華道と俳句の違いを聞くと、島本さんは「〝素材〟が違うだけ。造形の中で個性を出し、人に感動を与えるところは同じ」と笑顔で話す。

今まで旅した国は35カ国。句集では各国の思い出60句を掲載している。世界三大瀑布に後ろ髪を引かれる出発は「ナイアガラの滝を背にして発つ夜明」、軽快な音楽が鳴り響くスイスの夜は「レマン湖の月傾きぬジャズフェスタ」、暑さと迷路のような道に困ったパリは「炎天のパリの五叉路に迷ひけり」と詠んだ。

島本さんが現地で見て、聴いて、感じたことを五・七・五の十七音にぎゅっと集約。耳なじみのある地名や名所などが読み手のイメージを膨らませる。

「助詞一つで変わる」のが俳句の魅力という島本さん。春の一句「さくらさくら今年も一人見上げをり」を例に、「今年『も』とするか『は』とするかで全く違う。日本語の素晴らしさに感動した」と振り返る。

句集の題名は、約30年前に娘2人と訪れたイギリス・グリニッジ天文台での感動を詠んだ「着ぶくれて親子の跨ぐ子午線0」から取った。「0」には、ここからスタートという思いも込めている。

句集の構成は、海外の思い出を詠んだ「Abroad」から始まり、春夏秋冬、新年の句へと続く。華道に精通した島本さんらしく「チューリップ」や「向日葵」、「コスモス」など花が登場する句も多く、多彩な色が添えられた一冊となっている。

次の目標は、生まれ故郷・和歌浦の在りし日の姿を俳句で残すこと。島本さんは「私が子どもの頃に過ごした昭和の和歌浦を文字で残し、次の世代に伝えられたら」と話している。

句集『子午線の0』は全251㌻、1000円。

購入などについての問い合わせは滝山俳句会の桑島さん(073・451・6110)。

 

句集『子午線0』を手に笑顔の島本さん