成長と分配の好循環実現を 先端技術を地方で多分野展開
「新しい資本主義」と「デジタル田園都市国家構想」は、岸田内閣のメインテーマです。ただ、わかりにくいとの声があるので、私の理解を簡単に述べます。
まず「新しい資本主義」は、新しい時代の資本主義ということです。
現在は大変革期、まさしく新しい時代が始まっています。行政、金融、教育、医療・介護、防災・災害対策、生活、交通、エネルギー、環境、防衛、さらに農林水産、建設、製造、小売、中小企業などあらゆる社会生活や産業分野で、Society5・0に象徴される革新的技術を取り入れ、都市と地方の格差なく多様なニーズにきめ細かく対応して、モノやサービスを提供し社会的課題も解決していくことで、新たな成長を図ります。
そして、従来とは根底に流れる考え方が異なります。新自由主義的経済が所得の二極化や社会の分断を生んだ反省を踏まえ、一人ひとりの持続的な幸福の実現を目指すもので、社会的課題の解決とそれに伴う市場創造による成長を「三方良し」の精神で多くの国民・地域・分野に広く還元し、成長と分配の好循環を実現していく考え方です。
また、失われた20年間に他国は平均2%以上で成長し、賃金も物価も上昇する一方、日本はゼロ成長で賃金も物価も上がらず、その差は50%にもなっています。すなわち「安いニッポン」であり、買い負け・人材流出・企業買収などが起きており、将来的に外国人労働者は賃金の低い日本に来なくなると見込まれます。この現実を踏まえ、他国とのギャップを解消し、二流国家化を防ぐことは喫緊の課題です。まずは適正な価格・利潤・賃金によって、安ければよいという価値観を改め、成長と分配の好循環を実現していかねばなりません。
以上のような基本方針を元に、人への投資、科学技術イノベーション、スタートアップ支援、脱炭素・デジタルの各分野に重点的に投資します。
次に「デジタル田園都市国家構想」は、「新しい資本主義」で指摘した革新的技術を地方でさまざまな分野に展開しようとの考えです。
これまでSociety4・0(情報社会)ではクラウド(サイバー空間)の情報を人の手で活用していましたが、Society5・0ではセンサー(IoT)などから自動で集めた情報(ビッグデータ)を、人工知能(AI)が解析して高付加価値な情報を人に提示します。具体的には次のような例が挙げられます。
①行政では、職員の事務作業が最大90%低減可能に。
②医療では、自動健康診断や最適治療の判断、さらに専門医師による遠隔医療が可能に。また介護では、センサーによる見守りや排泄支援など介護者の負担軽減。
③中小製造業では、事務作業の軽減をはじめ、新素材やAI・IoT・ロボティクスなどの活用で生産性向上。
④農業では、ドローンやパワースーツによる作業の省力化、さらには温度・湿度・CO2・日射量などデータの最適活用で収量向上。
⑤ドローンは、位置情報を活用した遠距離物流や農薬散布、さらに樹園地や森林などの画像監視、高所のインフラや屋根などの点検、測量、被災状況やスポーツの空撮などに利活用。
⑥マイナンバーカードは、デジタル社会のパスポートとして、ワクチンが接種券なしにどこでも接種できたり、給付金の早急な振込などさまざまな利便性が向上。
以上はほんの一例ですが、新しい時代に向けて、全国各地で先端技術を利活用して、都市と地方の格差のない経済成長を実現し、一人ひとりの国民の持続的な幸福を目指すというものです。
ぜひ、それぞれの分野で変化に敏感に対応して、経済成長や生活改善につなげていきましょう。