移住者に「つながり」を 藤原さんが発信

東京から和歌山市和歌浦に家族3人で移り住んだ藤原和香奈さん(43)も、認定NPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)を利用した一人。昨年6月には移住者の交流会を立ち上げ、暮らしぶりを伝える動画を紹介するなどし、古民家でニワトリたちに囲まれながら和歌山ライフを満喫している。

「地方に住みたい」という夫の巧さん(37)の言葉をきっかけに、家族で移住を考えるようになったという。娘の愛さん(4)を思い「自然の中で子どもを育てたい」と、最初は、東京からアクセスも良く、自然に囲まれた埼玉県秩父地方を候補にしていた。しかし、海が好きで魚をさばくのが得意な巧さんにとっては、踏ん切りがつかずに断念。

藤原さんが住んでいた東京都港区の住み心地が悪い訳ではなかった。子育て支援も手厚かったが、毎日保育園に子どもを預け、会社と家とを往復する日々に疑問を持つようになり「子どもと向き合う時間が少ないことに気付いた」という。

生活を変えたいと思いながらも、具体的に何をすれば良いのか悩んでいた頃、親から和歌山に空き家になっている祖母の家があるので、そこに住んではどうかと勧められた。当初、和歌山への移住は考えてもみなかったが、まずはふるさと回帰支援センターで相談することに。オンライン移住セミナーに参加後、翌週にはホテルを予約して導かれるように和歌山へ向かった。

築100年以上の祖母の家は、思っていたよりもきれいで、和歌浦や片男波の海を見て移住を即決した。

今では町内会でも厚い信頼を得て、会計係を担うなど和歌山の生活になじんではいるが、20年10月に移住した当初は、祖母が住んでいたまちとはいえ、知り合いや頼れる人がおらず不安や孤独を感じることも多かったという。

そこで、同じ悩みを抱える仲間が集えるようにと、21年6月に移住者交流会「ツナガルワカヤマ」を発足。毎月10人程度の交流会を開くようになった。きっかけは、和歌山市の旭大介さん(36)が運営するコワーキングスペースcotowaで開かれた移住者交流会だった。自分の人生に能動的な仲間たちの姿を見て、「私も何かしたい」と奮い立ち、開業を決意。「わかやま地域課題解決型起業補助金」に応募し、事業家としての一歩を踏み出した。

対面以外では、ユー・チューブチャンネル「移住家族ちゃんねる」を開設。移住前の心構えや魚のさばき方、DIYなど和歌山ライフを満喫するための欠かせない情報を発信している。「田舎暮らしに慣れるまで大変ですが、DIYで鶏小屋を作ったり、近所に産みたての卵を配ったりして楽しんでいます。新しい仲間も増やしていきたいですね」とにっこり。

いまでは、チャンネル視聴者からの質問や、ホームステイの受け入れが増加するなど、藤原さんの移住生活は活気に満ちあふれつつある。

交流会を立ち上げた藤原さん

交流会を立ち上げた藤原さん