「国産レモン」の普及に貢献
前号では、認証制度でブランド化に成功した「金柑」の事例を取り上げた。今週は、年間を通して食卓を彩る「レモン」を紹介したい。
レモンはミカン科ミカン属に属する柑橘(かんきつ)。ビタミンCが豊富に含まれ、酸味と香りが強く、主に果汁をさまざまな料理やスイーツに活用することは皆さまもご存じのとおり。
原産地はインドのアッサム地方。日本では明治6年に静岡県で栽培が始まり、その後、気候が近い和歌山県に伝わったとされる。現在、レモンの一大産地である広島県には明治31年に伝わり、それには和歌山県が関係しているという。
広島県におけるレモン栽培は和歌山県からネーブルの苗木を購入した際に、偶然、レモンの苗木が混在しており、その中から3本を試植したのが始まりとされる。
瀬戸内の気候がレモンの栽培に適していることが分かり、また、明治末期から大正初期にかけての価格高騰が追い風となり、主に、広島県の大長地域を中心に急激に栽培が普及した。
昭和39年の輸入自由化や、昭和51年と56年の寒波により、広島県をはじめ国産レモンの生産は陰りを見せ、輸入レモンが市場の大半を占めるほどに。しかし、輸入レモンの外皮に防腐剤が添付されていることから、より安全性を重視する人々から国産レモンが支持され、栽培は現在も続けられている。
2018年の統計によると、生産量の第1位は広島県(42・1%)、第2位は愛媛県(31・3%)、第3位は和歌山県(9・6%)で、和歌山県内の主な産地は、紀の川市、湯浅町、有田川町となっている。
瀬戸内を中心としたレモン栽培に一役貢献した和歌山県。国産の良さを伝え、末永く栽培が盛んであってほしい。
(次田尚弘/和歌山市)