茶道ゆかりの地で 表千家同門会全国大会
第81回表千家同門会全国大会「和歌山大会」が8日、9日の2日間にわたり、和歌山市などで開かれた。和歌山は表千家の基盤を築いた4代家元・江岑宗左(こうしんそうさ)が、紀州徳川家初代藩主頼宣(よりのぶ)に「茶堂(さどう)」として仕えて以降、幕末に至るまで約200年にわたり、代々家元が出仕したゆかりの地。全国から訪れた約600人が、深いつながりに思いをはせながら茶を楽しんだ。
江岑は、茶の湯を大成した千利休のひ孫にあたる。和歌山では、三木町に屋敷地を拝領し、代々家元が藩主らの茶の湯の指南役などを務めた。利休の茶の湯は、孫の元伯宗旦(げんぱくそうたん)の三男・江岑が表千家、四男が裏千家、次男が武者小路千家を築き、三千家で継承している。
同大会は、会員の交流と茶道文化の普及、発展を目的に1977年から全国各地で開催。今大会では、紀州徳川家にゆかりのある場所を中心に、養翠園(同市西浜)や和歌山城ホール(同七番丁)など5カ所で茶席を設けた。和歌山で同大会が開かれるのは24年ぶりで、79年、98年に続く3回目。
8日は、15代千宗左(そうさ)家元が、岩出市の根来寺を訪問。前家元の而妙斎(じみょうさい)千宗旦(そうたん)宗匠や同寺の中村元信座主らと共に、旧紀州藩別邸である湊御殿の一部を移築した広間で開かれた茶席に参加した。席主は、㈱島精機製作所代表取締役会長で、同会県支部の島正博支部長が務め、秋晴れの中、和やかな雰囲気で茶を楽しんだ。
茶菓子は、江岑と同様に頼宣の時代に紀州に移った縁から、和歌山市の総本家駿河屋善右衛門の銘菓「本ノ字饅頭」の蒸したてが振る舞われた。また、床の間には7代家元・如心斎の「千里同風」の掛け軸が飾られ、花はダイカグラツバキとサガギクと、秋の装いでもてなした。
江岑宗左の足跡辿る 式典や講演会も
8日には、和歌山城ホール大ホールで大会式典が行われ、千宗左家元をはじめ、仁坂吉伸知事、尾花正啓市長、紀州徳川家19代当主徳川宜子(ことこ)さんらが出席。千宗左家元が「和歌山と私たち千家は、200年以上にわたる深いご縁がある。大会を通じ、そのご縁に触れ、長い歴史への思いを寄せていただければ」とあいさつした。
その後、市立博物館の山下奈津子学芸員が「家老の日記にみる紀州藩での江岑宗左」を演題に講演。紀州藩の家老・三浦為時の日記などから、昨年350回忌を迎えた江岑の和歌山での足跡をたどり、参加した約600人は和歌山との深い結び付きを再認識し、さらなる茶の湯への思いを深めた。