水道24年度赤字へ 和市が料金検討委立ち上げ

和歌山市は1日、水道を安定的に供給し、事業を継続するための適正な料金体系の構築に向け、有識者らによる検討会議を立ち上げ、初会合を開いた。市の水道事業は1998年度以降、料金を据え置いているが、昨年10月の六十谷水管橋の崩落以前から、2024年度に赤字に転落することが見込まれており、料金の値上げをどのように進め、市民の理解を得るかが検討の焦点となる。

検討会議は、江種伸之和歌山大学システム工学部教授を座長に、学識経験者、自治会、医師会、女性団体の代表ら9人の委員で構成し、初会合では、市企業局が、水道料金の現行制度や減少を続ける料金収入の現状などを説明。尾花正啓市長はあいさつで、「人口が減少し、水道施設が老朽化する中、25年度には料金を改定せざるを得ない状況になっている」と述べ、料金引き上げの具体的な検討に向け、委員の協力を求めた。

水道事業は独立採算制で、必要経費を税金ではなく料金収入でまかなっている。市の料金収入は、98年度の89・6億円から、21年度は64億円まで減少。給水人口の減少や、節水機器の普及による使用水量の減少が要因となっている。

送水管の口径が13㍉、20㍉の一般家庭では、給水人口は98年度の38万1229人から21年度は34万7258人に約3万4000人の減少。1人当たりの一日の使用水量は、98年度の288㍑に対し、21年度は260㍑まで減った。

現行の料金制度は、一定量の生活用水は低価格で提供し、使用水量が多いほど単価が高くなる「逓増(ていぞう)制」をとっているため、核家族化による給水戸数の増加と1戸当たりの使用水量の減少も、減収に拍車をかけている。

21年度でみると、1立方㍍当たりの給水原価158・67円に対し、水道料金の単価が原価を上回っている一般家庭は、1カ月の使用水量が50立方㍍以上の約20%にとどまり、残る約80%は原価割れの状態。使用水量の多い家庭や、一般家庭以外の大口の使用者からの水道料金が収入に占める割合が大きい構造となっている。

今回は具体的な値上げ幅は議題とならなかったが、水道料金の検討会議とは別に行われている「新水道ビジョン検討会議」に示されている試算では、25~38年度の平均で16・5%の基本的な値上げが必要とされ、紀の川北部への送水路を複線化する事業を行えばさらに1・2%のプラス、複線化と新浄水場建設の両方を行う場合は6%のプラスとなっている。

委員からは、「一般家庭の80%が原価割れなのはアンバランス。解消できないのか」「水道施設の更新スピードを上げた場合に必要な値上げ幅のシミュレーションもしてもらいたい」「六十谷水管橋の件があったから値上げされると思っている人も多い。もっと広報が必要だ」などの意見が出た。

市は24年度中に料金改定の条例改正案を作成したいとしており、検討会議で課題などの議論を進めていく。