楽しいポップ広告 サンキョーの似顔絵話題
和歌山市内に3店舗を展開するスーパー「食品館サンキョー」店内では、従業員の似顔絵で商品を宣伝する手描きのポップ広告を多く目にする。店に入るとすぐ目に飛び込んでくるのが、仕入れ担当者が頭にミカンをかぶり「サンキョーのみかんおいしいよ」と笑顔で呼び掛けるイラスト。その横で商品を並べている本人に遭遇。そっくりな似顔絵に思わず笑ってしまう…ということも同店ではよくある。一体誰が描いているのか。客の心をつかむ似顔絵の秘密に迫った。
同店は1974年に同市園部で開店した地域密着型のスーパー。2代目に就任し7年目という石原秀夫社長(45)は、アニメなどのサブカルチャー好き。「人を傷つけたり、法律にふれたりしなければ面白いことは何でもやってみよう」がモットー。店内に貼ってある目を引く絵は、チラシ制作担当として採用したスタッフがイラストが得意だと聞き、描いてもらったことがきっかけだという。
イラストを担当しているのは、2年前からパートとして働いている同市の原美紀さん(50)。子どもたちが成長し、そろそろパートでもしようかと思っていた時、買い物に行ったサンキョーでスタッフ募集の張り紙を見つけ、すぐに応募したという。
原さんは「普段は地味だけど、絵を描くとみんなが周りに集まってきた」という子ども時代を過ごし、高校卒業後は地元の書店で勤務。商品やキャンペーンなどを知らせる手描きポスターを制作していたが、出産を機に退職。育児日記をイラストで描き、保育園で面白いと褒められるなど、絵を描き続け、仲間とギャラリーで作品展も開いたこともある。
そんな原さんに、石原社長が「似顔絵できる?」と依頼。楽しいことが大好きな石原社長は「頭にミカンかぶったようなの描ける?」などと、次第に注文はエスカレート。その期待に応えるべく、原さんの絵もどんどん進化を遂げていったという。
描かれているのは「肉は切り方で変わる」と包丁を掲げ、店内切りをアピールする畜産担当者や、「おいしいで」と大漁旗を持ち、魚の総菜のおいしさを伝える鮮魚担当者など。それぞれのこだわりポイントやお薦め情報を、本人そっくりの似顔絵で伝えている。
その多くは、ほのぼのとしたかわいらしい雰囲気だが、社長の似顔絵は少しテイストが違う。原さんは「アニメが好きだと聞いて、劇画タッチでイケメンに描いてみた。さすがにやり過ぎたかな、もしかしたら怒られるかも、とドキドキしていたら全く怒られなかった」と笑う。
「面白く描くだけでなく、自分が描いた商品が売れるかどうか責任を感じている」と話し、どうすれば店頭で目立つかなど日々勉強し、売れ行きをチェックすることもあるという。
従業員からは「実物よりも良く描いてくれてうれしい」と好評。店では似顔絵を見た客から「お兄ちゃんこれやろ。よぅ似てるな」などと声を掛けられることも多く、客との会話のきっかけにもなっているという。
石原社長は「サンキョーはお客さんと店員の距離が近いのが特徴。地元スーパーとして面白い取り組みにはどんどんチャレンジしていきたい」と意欲的。社員、スタッフ含めて約100人の自由な発想やアイデアを取り入れ、面白く楽しいスーパーになるよう盛り上げている。