とらふすクラシック300回 記念コンサート
本紙毎週木曜掲載の音楽コラム「とらふすクラシック」の連載300回を記念する寄付コンサートが17日、和歌山市西高松のメディア・アート・ホール(県立図書館2階)で開かれた。和歌山ゆかりのアーティストたちが、紀州徳川家第16代当主・徳川頼貞が残した世界的な西洋音楽コレクション「南葵音楽文庫」にまつわるプログラムで聴衆を魅了し、収益は同文庫に寄付される。
「とらふすクラシック」は、2016年12月に同文庫が県に寄託され、里帰りしたことをきっかけに、翌17年4月にスタート。アーティスト自ら出演する演奏会などについて執筆するスタイルで、ことし4月に300回に到達し、現在も好評連載中。
記念コンサートは「徳川頼貞が愛した音楽」と題し、新進気鋭のバイオリニスト・澤亜樹さん(藝大フィルハーモニア管弦楽団コンサートマスター)をはじめ、宮下直子さん(ピアノ)、「黒江万金堂」(岡本万貴さん=フルート、金谷幸三さん=ギター)、南方美穂さん(クラリネット)、中川千絵さん(ピアノ)、中村心春さん(フルート)、有馬陽子さん(チェロ)、柴田陽さん(ピアノ)が出演した。
和歌山新報社の津村周代表取締役の開会あいさつに続き、南葵音楽文庫研究員の近藤秀樹さんが登場し、同文庫について解説。同文庫は徳川頼貞の個人コレクションという性格ではなく、音楽図書館、資料館の資料として広く日本に音楽文化を広めるライブラリーだったとし、「クラシック音楽全体がバランスよく分かるように作られており、堅実で先を見据えた仕事をしていた」と話した。
プログラムは、ヴェルディの歌劇「椿姫」の主題による演奏会用幻想曲(ロヴレーニョ)、協奏的大二重奏曲(ジュリアーニ)、朝の歌、夜の歌(エルガー)など、頼貞に直接的、間接的に関係がある多彩な内容。著名な曲も演奏機会の少ない曲も楽しめ、珍しい楽器編成での演奏にも接することができるコンサートとなり、最後は、澤さんと宮下さんが、頼貞と直接親交があったプロコフィエフのバイオリンソナタ第2番を演奏した。
アンコールの後、出演者は全員でステージに並び、聴衆から盛大な拍手を受けていた。