「梅干し」の歴史と魅力

前号では、梅の風味と果肉のうま味を楽しめる、自家製の「梅ジャム」の作り方を取り上げた。梅のうま味を手軽に楽しめる方法として最も一般的といえるのが「梅干し」。今週は梅干しの歴史と魅力を紹介したい。
梅干しの歴史は古く、平安時代にまでさかのぼる。村上天皇が梅干しと昆布茶で病を治したという伝説や、菅原道真が詠んだ梅の短歌から、釣りの際に梅干しを入れた弁当を持参すると釣果が悪くなるという迷信が残る。戦国時代になると保存食の他に戦場での食中毒や伝染病の予防に役立つ陣中食として使われた。
江戸時代になると、日本の食物について書かれた『本朝食鑑』という書物に梅干しが現れ、現代と同じ作り方や味わい方が記されており、長期保存ができる食べ物として定着した。
梅干しにクエン酸が多く含まれることから、唾液の分泌を促し脱水症状の防止や消化吸収を良くする他、疲労防止や疲労回復にも効果があるとされる。また、血糖値の上昇を抑え、便秘の解消、肝機能を高める効果も期待できる。抗菌作用や防腐の効果があることから、弁当やおむすびに梅干しが入れられる。
日本の食卓で一般的となった梅干しであるが、食生活の変化により消費量は年々減少している。総務省の家系調査によると2022年の年間消費量は1世帯あたり650㌘。20年前と比べると4割程度の減少となる。
みなべ町は南高梅が誕生した町であり、重要な基幹産業として定着した梅の積極的な普及と消費拡大を図り、南高梅のブランド確立と産業振興、町民の健康の維持・増進の視点から、2014年10月に「みなべ町紀州南高梅使用のおにぎり及び梅干しの普及に関する条例(梅干しでおにぎり条例)」を制定。梅を使った商品の消費拡大を目指している。
梅雨明けし、暑さが増すこの季節。梅干しを食べて乗り切りたい。
(次田尚弘/和歌山市)