買い物弱者支えたい 松江で月1度「日曜市」

和歌山市松江北の喫茶店「らんぷ」前には、毎月第3日曜日、新鮮な野菜や果物、弁当やパン、菓子、日用品などが並ぶ。交通手段がなかったり、遠出するのが難しかったりして食料品や日用品の調達が困難な買い物弱者の力になりたいと、松江地区社会福祉協議会が始めた取り組みで、5周年を迎えた。月に1度のマーケットに加え、店の中では地域住民が集う「お喋りサロン」が開かれ、毎回多くの人でにぎわっている。

同地区にはかつて住友金属工業に勤める人が多くおり、昭和40年代には店が建ち並びにぎわっていた。食品から洋服までそろう松江市場やスーパーも数軒あった。しかし時代の波を受け、約30年前に市場は閉店。スーパーや商店も次々と姿を消し、現在同地区に歩いて行くことができるスーパーはない。

同地区には1人暮らしの高齢者が多く「車がなくて買い物に行けない」という住民の声を聞き、松江地区社会福祉協議会は、歩いて行ける場所でマーケットを開こうと企画した。地域の人が集う場所となっている喫茶店「らんぷ」の小林範子さん(56)に協力を依頼。小林さんが声をかけ、ボランティアが集まった。

開催は毎月第3日曜日。仕入れ、販売合わせて15人ほどのボランティアスタッフ、同地区社協役員、民生・児童委員らが協力して運営。高齢者が食べやすく、調理が簡単で日持ちするインスタントやレトルト食品の種類を多く取りそろえ、野菜や果物は近所の農家の協力もあり、新鮮なものが並ぶ。他にも米、調味料、洗剤、ティッシュなど、品ぞろえは幅広い。回を重ねるうちに買い物客の好みをつかみ、仕入れを工夫している。

仕入れを担当するスタッフは、「もうけを考えず仕入れた原価で販売するため、できる限り安く仕入れるよういろんな店を回っている」と話していた。

当日、朝10時からの開催を町内放送で知らせると、目玉商品は2時間ほどで売り切れることもあるという。袋いっぱいに買い物をしていた男性(82)は「松江には歩いて行けるスーパーがなく、自分は車に乗れないからこういう店は本当に助かる」と笑顔。

食料品の購入だけでなく、高齢者の安否確認や住民の交流の場にもなっている。店内では買い物を終えた客が集まり、会話を楽しむ姿があった。80歳と83歳の女性2人は、毎回誘い合って買い物に来ると言い「ここでコーヒーを飲んで帰るのが月1回の楽しみ」と話していた。

同協議会の川口彰子会長(70)は「商品の値段は手書きで、レジも電卓で計算。手作りでアナログなマーケットだけど、みんなに『安い』、『助かる』と喜んでもらえるようにスタッフ一同、力を合わせ努力し、続けていきたい」と話している。

今月の開催は17日で、午前10時から午後2時まで。

食料品や日用品などが並ぶ

食料品や日用品などが並ぶ