巨大地震想定 和歌山市が事前復興計画で訓練
和歌山市は17日、昨年10月に中核市で初めて策定した「事前復興計画」に基づく初の災害対応図上訓練を実施した。困難な状況が伝えられる能登半島地震を踏まえ、市職員40人が緊急輸送道路の啓開、応急仮設住宅の建設に向けた検討、事業者への支援など、発災3日後から2カ月後までを想定して対応を話し合い、課題を洗い出した。
市は昨年10月、南海トラフ巨大地震を想定し、迅速な復興のための基本方針を定めた「事前復興計画」を、人口20万人以上の中核市で初めて策定。津波浸水想定地域に居住の集中地域が含まれ、沿岸部に製造業や観光施設が集積しているなどの市の特徴を踏まえ、既存の土地や高台を生かした復興などを掲げている。
同計画では、復興までの流れを緊急対応期、応急復旧期、復興始動期、本格復興期の4段階に整理しており、今回は、被災後の混乱の中、被害状況を把握し、命を守るために必要な緊急的対応を進める「緊急対応期」の訓練とした。
訓練の想定は、14日午前10時に県南方沖を震源とするマグニチュード9・1の南海トラフ巨大地震の発生により、和歌山市は最大震度7を観測し、市内全域で全半壊家屋が多数発生した他、市内の約20%が津波で浸水し、水道・電気・ガスなどのライフラインの供給が全域で不安定な状況になったというもの。職員は、住まいの確保、暮らしの確保、市街地の復興、農林水産業の再生、商工業の再生の5グループに分かれて訓練した。
訓練では、発災から3日後、10日後、30日後、60日後の各時点でどのような状況になっているかを記したカードを各グループに配布。職員は状況を共有して話し合い、市の地図上や付箋などに、対応すべき課題や対応の方法などを書き出していった。訓練後は、振り返りの討議も踏まえてグループごとに意見を発表。住宅の危険度調査を行う訓練の必要性、調査にも道路の啓開をはじめ交通手段が必要になること、地域のマンパワーだけでは対応し切れない要支援者らを被災地に入ってくる支援チームにいかにつなぐか、事業者が安心して市内で事業を継続するための市独自支援策の研究など、さまざまな課題が出た。
参加した保健所総務企画課の神戸千佐班長は「自分の部署だけでなく、関係部署が一緒に動く必要があることが多い。できるだけ事前に共有していく大切さを実感した」、公共建築課の中井統也班長は「公共仮設住宅を迅速に建てることが大事だ。今は公園を建設地に想定しているが、災害時には危険がないか調査も必要で、他の場所の確保も考えていきたい」と振り返った。
講評した亀井利昭理事兼危機管理局長は「事前復興計画は作って終わりではなく、始まり。各部局がそれぞれの役割を担いつつ、一丸となって対応することが大事。今回のような訓練、研修を重ねて、適宜修正していきたい」と話した。