豪雨での活動評価 海南市消防団に大臣表彰
昨年6月の台風2号に伴う豪雨で、的確な水防活動や避難誘導で被害の軽減に尽くしたとして、和歌山県の海南市消防団(岡室孝明団長)が本年度の水防功労者国土交通大臣表彰を受けた。県内では1995年度以来、28年ぶりの受賞。日頃から地域に密着し自治会と連携を図っていたことが住民の迅速な避難につながったといい、岡室団長(60)は「地元を守るための消防団。現場に出動し、活動してくれる団員みんなで頂いた賞。感謝したい」と話している。
同表彰は、水防に従事し、著しい功績のあった団体や個人を表彰する1951年から実施している制度。本年度は全国で6団体と17人が受賞した。
同消防団は、2023年6月の豪雨の際、延べ260人が出動し、河川などの警戒巡視や積み土のうの実施、排水活動などを行い、人命の安全確保と被害の軽減に多大な貢献をしたとして表彰を受けた。
同消防団は、2005年の旧海南市と旧下津町の合併に伴い、海南市消防団と下津町消防団が合わさってできた。15分団664人からなり、火災や水害などが発生した際、出動し活動している。
市内では昨年6月2日、台風2号の接近に伴う線状降水帯の発生による大雨で川の氾濫や床上床下浸水など多数の被害が出た。
2日午前からの大雨洪水警報、土砂災害警戒情報(レベル4)の発表を受けて、岡室団長は、すぐに車で消防本部へ向かったが、途中に土砂崩れがあり通常より1時間以上遅れて到着。その後、副団長らと共に現場へ向かうと日方川があふれ、本来川にあるはずの大きな石が道路に上がっていた。
「どこもかしこも手がつけられない状況で、今までに経験したことがない異常な事態だった」と振り返り、「消防本部も全ての状況を把握するのは困難で、あふれた川の水があちこちの住宅の中へ流れていく。どうしたらいいのかと、動くことができなかった」と話した。
消防団員はそれぞれの地区で、市民からの「ここに土のうを積んでほしい」「土砂をなんとかしてほしい」などの要望に対応。車の誘導や、逃げ遅れた人を避難所へ連れて行くなど、一つひとつ対応していったという。
岡室団長は「消防団の強みは地域密着。自治会との連携で足の悪い人や寝たきりの人がどこに住んでいるかなどを把握している」と話す。
今回の出動を振り返り、「雨の量が恐ろしく、一気に水かさが増した。逃げ遅れる前に行動に起こすことが重要。事前に対処できるよう、消防団が率先して市民に声をかけていかないといけない」と気を引き締めた。
市消防本部の山田量也消防長は「(表彰は)大変名誉なこと。地域に根差した活動をされ、支えてくれてありがたい」と感謝した。今後は男性だけでなく女性の力も必要だと、同消防団では女性団員も歓迎している。