ALSの日常描く映画 患者の北畑さん上映へ
全身の筋肉が徐々に動かなくなる神経難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者、オリヴィエ・ゴアさんの日常を追ったドキュメンタリー映画「アンバンシブルエテ(不屈の夏)」の上映会が24日午後1時半(開場0時半)から、和歌山市西高松の県立図書館メディア・アート・ホールで開かれる。昨年8月に自身もALSと診断された同市の北畑達哉さん(64)が実行委員長として上映の準備を進めており、「さまざまな困難を抱える人に、少しでも希望を届けたい」と来場を呼びかけている。
北畑さんが体に異変を感じたのは昨年の正月ごろ。初めはペットボトルのふたがうまく開けられなくなり、加齢による握力の衰えかと思っていたが、やがて箸も持てなくなり、8月にALSの診断を受けた。原因不明で治療法も確立されていない難病であり、医師から「普通に過ごせるのは2~3年と思ってほしい」と宣告された。
「とらわれず、一日一日を楽しく過ごしたい」と前を向く北畑さんだが、「本人だけでなく、家族や周りの関係者がどう希望を見つけていくかという闘いになる。覚悟を持って立ち向かっていかないと」と話し、切迫した思いが脳裏を離れることはない。
ALS患者やその家族が集い、それぞれが抱える困難に共感し、希望を持てる場をつくれないかと北畑さんは考え、森礼子県議に相談。森県議はニュース番組で、ゴアさんと出会った日本のALS患者が「不屈の夏」を上映する取り組みをしていることを知り、和歌山でも開催することを北畑さんに提案した。
東京や神奈川県で上映会をしてきたALS患者、一般財団法人すこやかさゆたかさの未来研究所の畠中一郎代表理事をはじめ多くの団体・企業の協力、和歌山県、和歌山市、県社会福祉協議会の後援を得て、初の和歌山での上映会が実現する。畠中代表理事はゲストとして当日の会場に参加する。
「不屈の夏」は、20年12月にALSと診断されたフランス人実業家ゴアさんが、余命宣告をあえて無視し、残された人生の時間を家族と共に、笑顔で精いっぱい生きる姿を描いている。昨年5月に同国で公開され、20万人が鑑賞した。
森県議は「原因も分からない中で体の機能が衰えてくる不安を、皆で支えていかなければと思う。人と人とが力を合わせる大切さを教えてくれる作品だと感じる。ぜひ見ていただきたい」と話し、後援する県の宗野孝信健康推進課長も「難病の患者さんはいろいろな問題を抱え、打ちひしがれることもある。この映画をきっかけに、自分だけではないということを感じ、支え合っていく人が増えれば」と期待する。
北畑さんは、ALS患者やその家族にとどまらず、「他の難病や障害のある人など、さまざまな困難を抱える人に見てもらい、少しでも希望を感じ取ってもらえる上映会になれば素晴らしい」と話している。
上映会は参加無料で、定員300人。問い合わせは森県議の事務所(℡073・422・8822)。