家庭廃油で燃料精製 県が回収実証へ協定
和歌山県は11日、天ぷら油など家庭の廃食用油を回収し、CO2削減効果の高い燃料などに利活用する仕組みの構築に向け、7月から開始する回収の実証事業に協力する植田油脂㈱(大阪府大東市)と連携協定を締結した。
石油元売り最大手のENEOS(エネオス)㈱が、旧和歌山製油所(有田市)で持続可能な航空燃料(SAF)の製造事業の実施を目指していることを受けての取り組み。
実証事業は、和歌山、海南、有田の3市で実施。モニター登録した人に専用ボトルを配布し、スーパーや廃品回収事業所、市役所、県庁などに設ける回収拠点で使用済み植物性食用油(消費期限切れを含む)を集める。モニターは3000人を目標とし、廃油の量や回収頻度などのデータを取り、県内家庭からSAFの原料がどの程度供給できるのか、持続的に可能なのかなどを検証する。
モニターは3000人を目標とし、11日時点で約400人が登録。回収拠点は36カ所で、今後も追加する場合がある。
植田油脂は廃食用油の回収、リサイクルを手掛け、大阪府内の自治体と協定を結び、事業を展開しており、都道府県との協定は初めて。
同社によると、実証事業で回収した廃油は、約70%を軽油代替燃料のバイオディーゼルに精製することができ、収集・運搬車や、大阪・関西万博の建設工事建機の燃料などに活用する予定。他の成分も余さずリサイクルできるという。
協定の締結式は県庁知事室で行い、同社の髙橋史年社長と岸本周平知事が協定書に署名した。
髙橋社長は「家庭の廃食用油のリサイクルはまだ非常に少ないが、2030年ごろには全国に浸透するスキームだと確信している。先駆けて和歌山県から取り組みをどんどん発信してもらいたい」と述べ、子どもたちへの環境教育にも役立てることを提案。岸本知事は、県民に今回の事業や循環型経済について関心を持ってもらう重要性を話し、教育での連携にも前向きな姿勢を示した。