音の「源氏物語」 遠藤さんスペインで公演

岸本知事を囲み、遠藤さん㊨、赤在さん
岸本知事を囲み、遠藤さん㊨、赤在さん

平安時代に紫式部が書いた『源氏物語』全54帖を音楽で表現し、スペインでの公演を成功させたピアニストで作曲家の遠藤征志さん(46)が、和歌山県庁に岸本周平知事を訪ね、活動を報告。和歌山市でも来年春にコンサートが決定したことを伝えた。

遠藤さんは新潟市出身、東京在住。4歳からクラシックピアノを始め、22歳からジャズピアノに傾倒。玉川大学教育学科卒業と同時にプロ活動を始めた。2014年に源氏物語のプロジェクトに着手し、7年かけて54帖を作曲。各地でコンサートを重ねている。

遠藤さんは、海南市の赤在依美さんが代表を務める音楽企画団体「ミュージックエージェンシー・リベラ」のメンバーでもあり、同市でもことし1月に公演。好評を博した。

今回のスペインでのコンサートは、在スペイン日本国大使館が主催。6月中旬に王立サン・フェルナンド美術アカデミーなど、マドリードとマラガの2カ所で全5公演を実施した。

遠藤さんは「源氏物語五十四帖の響」の他、両国で親しまれている楽曲を独自のアレンジで演奏。観客がスタンディングオベーションでたたえ、「ブラボー」の歓声とともに、拍手が鳴りやまなかったという。

県庁へは、スペイン公演にも同行した赤在さんと2人で訪問し、現地でのコンサートのダイジェスト映像を紹介。岸本知事は「素晴らしい。これを少し聴いただけでも伝わり、感動する」と話し「和歌山はスペインと参詣道・巡礼の道で提携し、日本との友好にもプラスになること。来年の和歌山公演も、成功をお祈りしています」と今後の活動に期待を寄せた。

マラガのマリア・クリスティーナホールでの公演
マラガのマリア・クリスティーナホールでの公演
今を生きる人の心に 千年前の感情紡ぐ

千年以上にわたり読み継がれてきた物語を、現代の音として表現するという壮大なプロジェクト。遠藤さんは「感情」をテーマにしようと決め、そこに描かれる悩みや苦しみ、生きづらさの中にも美や希望を見いだしながら、一つひとつ時間をかけて読み解き作曲したという。

「フィクションでありながら、そうとも思えない。今も感情がここに漂っているかのようだった」と遠藤さん。現代を生きる人と何ら変わりない心の情景を音にし、千年前とつながることは、今の人の力になるかもしれないと強く感じたという。

スペイン公演を振り返り「向こうで源氏物語を知っている人は、恐らく、ごく少数。それでも『知りたい』という思いで、心を開いて聴いてくださっているのが伝わってくるようだった」と笑顔。「演奏を終えた時の光景は、これまで見たことのないほど感動的な景色でした」と話していた。

和歌山市でのコンサートは来年4月29日、和歌山城ホールで開催を予定している。