防災劇「稲むらの火」 女性消防団が全国発表へ

梧陵役の山本さん(左から2人目)らが稲むらに火を放つシーン
梧陵役の山本さん(左から2人目)らが稲むらに火を放つシーン

和歌山県紀の川市消防団女性分団のダンスチーム「ぷるぷる隊」は19日、第29回全国女性消防団員活性化とちぎ大会(栃木県宇都宮市)で、安政南海地震の津波から村人の命を守った濱口梧陵の「稲むらの火」をテーマにした防火防災啓発劇を初めて発表する。和歌山の偉人の功績を全国の女性消防団員の前で発信する大舞台に向け、熱心に練習に取り組んでいる。

紀の川市消防団女性分団は2016年の発足以来、地域の防災啓発活動に尽力しており、ダンスの他、紙芝居、手話、応急手当の各チームに計14人の市民が所属している。

ぷるぷる隊のメンバーは50~60代を中心とする32歳から65歳までの8人。これまでは市内で啓発ダンスの発表などを行ってきたが、「和歌山に濱口梧陵という人がいたことを知ってもらいたい」とのチームリーダーの山本美里さん(65)の思いなどから、「稲むらの火」を劇で紹介する取り組みを思い立ち、昨年11月から練習を始めた。

「稲むらの火」は、1854年の安政南海地震の際、津波が来ることを予測した広村(現広川町)の梧陵が、収穫して干していた大切な稲に火を放ち、村人に山火事が発生したと思わせて高台に誘導し、多くの命を救った逸話。劇中では、梧陵役の山本さんが「稲わらに火を放て。人の命には代えられん」と呼びかけるなど、隊員たちが迫真の演技を見せる。

隊員たちは8回ほど広川町に足を運び、地域住民から梧陵の逸話について話を聞くなどした。山本さんが中心となって脚本を練り、小道具は隊員たちが手作りし、村人のために火を放つ重要なシーンで使うたいまつは、誘導棒にビニール袋をかぶせて作製した。

演技の指導は同市打田出身で演劇集団和歌山の城向博子さん(75)が担当。隊員たちは昨年11月に最初の打ち合わせをして以降、月に1回程度練習し、ことし6月以降は月2回に増やし、本番に向けて励んでいる。

全国女性消防団員活性化とちぎ大会は消防庁などが主催。防火防災啓発劇発表の中で、全国から選ばれた紀の川市消防団と香川県善通寺市消防団が、それぞれ発表する。

山本さんは「けがや病気に注意して、仲良く、楽しく、元気にみんなで頑張ってきた。大きな災害への防災意識が薄れないためのきっかけになりたい」と意気込んでいる。

ぷるぷる隊のメンバーは次の皆さん。

堂本小百合▽天田妙佳▽山本美里▽喜多博美▽樫葉昌世▽中原美和子▽三宅美惠子▽中西まゆみ