黒麹で健康的に飼育 松牛の「天空和牛」

天空和牛に黒麹を振りかけた牧草を与える西岡さん(手前)と西口さん
天空和牛に黒麹を振りかけた牧草を与える西岡さん(手前)と西口さん

和歌山県岩出市野上野の精肉店「松牛」(松下隆紀店主)は熊野牛オリジナルブランド「天空和牛」の飼育で黒麹を使い始めた。牧草や穀物飼料に振りかけて与えることで牛の腸内環境を整えて健康な状態で飼育することができ、病気の予防につながるとともに、飼料の吸収効率が上がることで安定した食欲が保たれ、増体、早期出荷が期待できる。県内では初の試みという。

天空和牛は、標高約600㍍に位置し天空の村と呼ばれる紀の川市平野の西口畜産と西岡畜産の2軒のみで生産。昨年7月に販売が始まった。

健康で良質な牛を育てようと、松下店主の提案でことし7月ごろから黒麹を使い始めた。使用することで従来に比べ、約10%の増体が期待できる。焼酎を醸造する際に発生する廃液を使用しており、鹿児島県霧島市から仕入れている。

現在、西岡畜産では約150頭、西口畜産では約90頭を飼育。例年、夏には飼料を食べる量が減ることがあるが、ことしは全くなく、固形のふんが増えてきたこともあり、西岡畜産の西岡将彦さん(44)は「夏に食べる量が減らなかったのは初めてのこと。腸の状態が良いのでは」と話す。

成長度合いによって飼料の量は異なるが、成牛には牧草1・5㌔と穀物3・5~4㌔を毎日2回与え、毎食1頭当たり10~30㌘の黒麹を振りかけている。

西岡さんは「天空和牛がさらにおいしくなるようにしたい。牛のストレスを少なくして健康に育て、お客さんにも喜んでもらいたい」と話している。

西口畜産の西口寿一さん(39)は「時代のニーズに合わせて今回のように新しいことにもチャレンジしていきたい」と意気込んでいる。

天空和牛は澄んだ空気やミネラルの豊富な湧き水など豊かな自然の下でストレスを少なくして飼育。2軒のみで生産することで品質が安定し、一般的な和牛の月齢は27~28カ月のところ、30カ月以上の長期肥育で深みのある味わいを実現している。

天空和牛の小売販売は松牛のみ。和歌山市、岩出市、紀の川市の飲食店などで味わうこともできる。

松下店主(51)は「ストレスなく育て、黒麹を食べさせて健康に育った牛をおいしく提供させてもらう。ぜひ天空和牛をお買い求めください」と呼びかけている。問い合わせは松牛(℡0736・69・0505)。