「八朔」に含まれる苦味成分

苦味成分が有効でプチプチした食感の「八朔」
苦味成分が有効でプチプチした食感の「八朔」

前号では、酸味・甘味・苦味がマッチし、続々と商品開発が進む「八朔のお酒」を取り上げた。数多くあるかんきつの中で、八朔が注目されている理由の一つはその苦味。今週は果実に含まれる成分から、八朔の魅力に迫りたい。

八朔特有の苦みは、和歌山の方言で「ちら苦い」と言い表される。標準語で言えば「ほろ苦い」に相当すると思うが、適度な酸味と甘みが相まって、絶妙な味を醸し出している。

この苦味の成分は「ナリンギン」というポリフェノールの一種。じょうのう(中袋)に多く含まれ、抗酸化作用があり、肥満の防止や高血圧の予防に効果があるとされる。これはグレープフルーツにも含まれる成分。

果皮に多く含まれる「オーラプテン」という香りの成分は、抗炎症作用や記憶力の維持が期待できるという。そのため、じょうのうをむいて果皮のみを食べるよりも、果皮やじょうのうも食べられるマーマレードやピールに加工し摂取する方が、より効果的である。

これらの成分を利用した漢方薬がある。「枳実(きじつ)」と呼ばれ、八朔の生育過程で摘み取られる未熟な果実を乾燥させ、生薬の原料として活用。消化不良や胸やけ、胃もたれ、便秘など胃腸の諸症状を緩和する効果があるとされる。加えて、自律神経を整えることで咳や痰を鎮める効果や心機能を高める効果もあるとされ、さまざまな漢方薬で活用。

近年は、摘果し破棄されていた果実を漢方薬の原料に活用することで、生産者の収益向上を図る取り組みが始まるなど、ここでも八朔の活用が広がっている。

余すところなく利用ができ、健康への効果が期待される八朔。シーズンを迎えるこの季節。健康増進に役立ててほしい。(次田尚弘/和歌山市)