文化財を守り後世へ 善福院釈迦堂で消防訓練

宝物を避難させる善福院関係者
宝物を避難させる善福院関係者

26日の「文化財防火デー」に合わせ、海南市消防本部(山田量也消防長)は28日、同市下津町梅田の国宝、善福院釈迦堂で消防訓練を行い、消防関係者との連携を図った。

文化財防火デーは、1949年1月26日に法隆寺(奈良県)の金堂壁画が焼損したことを受けて定められた。文化財の愛護や市民の文化財防火意識を高めてもらおうと、同消防本部は、毎年市内の文化財のあるさまざまな施設で訓練を実施している。

善福院釈迦堂は、1214年(建保2)に栄西禅師により創設され、廣福禅寺五ヶ院の一つ。現在の建物は1327年(嘉暦2)に建立された。

鎌倉時代の禅宗洋建築の中で最古の建物として現存するのは、同釈迦堂と山口県の功山寺仏殿のみで貴重な文化財。

善福院での訓練は8年ぶりで、昨年、放水銃や火災感知システムなどの消防設備を改修し、新たに貯水槽を設置した。

同本部や海南、下津消防署隊、善福院の市野善英住職や市消防団加茂分団小梅班など約30人が参加し、放水銃やホースからの放水、救助訓練が行われた。

参拝者の火の不始末から火災が発生、釈迦堂内の文化財を外に出そうと作業する人がけがを負い、堂内に取り残されたとの想定で行われ、境内から煙が上がっているのを善福院の市野住職が発見し、119番通報。その間に自動で左右に動く放水銃で類焼しないよう初期消火を行った。

駆け付けた消防隊らはホースを延長しながら釈迦堂に近づき放水し、鎮火を確認。負傷した人を釈迦堂内に見つけ、運び出す訓練も行った。

貯水槽には約40㌧の水があり、約20分間、消火活動ができるという。市野住職は「訓練は文化財を守るため意義のあること。防災設備の改修や新設後初めての訓練で、かけがえのない一日になった。ありがとうございます」と話し、下津消防署の中井理之署長は「文化財を火災から守るためには地域の人の力が欠かせない。文化財を守り後世に残すために本日の訓練を生かして一致団結してほしい」と話した。