日仏の食文化融合 湯浅醤油にクー・ド・クール賞

和歌山県湯浅町の湯浅醤油㈲(新古敏朗代表取締役)が、「フレンチビジネスアワード2025」(在日フランス商工会議所主催)のクー・ド・クール賞を受けた。日本とフランスの歴史と伝統を結び、両国の食文化の融合によって新たな価値を創造したことが高く評価された。新古代表は4日に県庁を訪れ、岸本周平知事に受賞を報告した。
同アワードは製品やサービスの革新、環境の持続可能性の発展に貢献した企業を毎年表彰しており、今回で14回目。同商工会議所会員企業がエントリーできる。
同賞は、業界や規模を問わず、優れた品質と国際貢献を示す幅広い企業に贈られる。
同社は2023年からフランス・サンテミリオンのワイナリーと共同で、黒と白の2種のしょうゆ「SHINKO NOIRE(濃口しょうゆ)」と「SHINKO BLANCHE(白しょうゆ)」の製造販売を行っている。濃口しょうゆは、ワイン樽で発酵、熟成させている。
フランスでのしょうゆ造りのきっかけとなったのは、2011年の東日本大震災を受け、しょうゆの輸出がストップしてしまったこと。新古代表は14年にボルドーで、木樽で長期熟成させて香りや味わいが増すワインの在り方を見て「同じ発酵食品であるしょうゆをフランスで造れるのでは」と可能性を感じ、挑戦を始めた。新型コロナウイルス感染症拡大により一時しょうゆ造りは中断してしまうが、23年に同ワイナリーのオーナー、アドリアン・ダヴィッド・ボーリュー氏が事業パートナーとなり、新たなスタートを切った。
黒しょうゆは、フランス産のオーガニック大豆と小麦、塩田で造られたイル・ド・レの塩をワイン樽で仕込んだもの。熟成期間は12カ月。フランス有機認証を取得し、透き通った黒色で甘みがあり、後味は軽やかな仕上がりになった。
完成した2種のしょうゆは、フランスや日本で販売。1万50000本が完売した。5月には、24年に仕込んだしょうゆが完成する予定。
新古代表は「フランスの家庭料理にしょうゆを広めたい。フランスに住むフランス人に、日本独特のしょうゆの使い方や文化をきちんと伝えたい」と話し、岸本知事は「しょうゆ発祥の湯浅から、国際マーケットで勝負できることはうれしい。県民の皆さんに知ってもらいたい」と受賞を喜んだ。
