大ヒット映画和歌山再来 侍タイムスリッパー

大ヒット、快進撃を続けるインディーズ映画「侍タイムスリッパー」の特別上映会が27日、和歌山市七番丁の和歌山城ホール小ホールで行われる。笑いあり、涙あり、手に汗握るチャンバラあり。懐かしくて新しい時代劇の魅力が満載で、安田淳一監督が「客席ごとタイムスリップできるような雰囲気を味わえる映画」と話す極上のエンターテインメント作品。御三家、紀州徳川氏の居城を望む会場で体感しよう。
幕末の京の夜、主人公の会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也さん)は、密命を受けて長州藩士と刃を交えた瞬間、落雷で意識を失う。目覚めた場所は現代の時代劇撮影所。守ろうとした江戸幕府が150年も前に滅んでいたと知り、一度は死を覚悟するが、撮影所の助監督・山本優子(沙倉ゆうのさん)をはじめ心優しい人々に助けられ、少しずつ元気を取り戻すと、磨き上げた剣の腕を頼りに、「斬られ役」として撮影所で新たな人生を歩み始める。
黒澤明監督の「椿三十郎」をはじめ、さまざまな時代劇の名作へのオマージュが込められ、数々の時代劇に出演してきた山口さん、風見恭一郎役の冨家ノリマサさんらの侍魂あふれる熱演が光る。
2024年8月に単館上映で公開された同作は、観衆の圧倒的な支持を受けて300館超えへと拡大し、第48回日本アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞など7部門の優秀賞を受賞。撮影や照明、編集などを含め一人で11役を兼ねた安田監督が、主演男優賞を除く全てに名を連ねたことも話題となった。第67回ブルーリボン賞でも作品賞、主演男優賞の2冠を獲得。相次ぐ受賞の効果もあり、再上映、新規上映が全国で相次ぎ、インディーズ映画として「カメラを止めるな」以来の大ヒットを続けている。
安田監督は大学卒業後、ブライダルやイベントなどのビデオ撮影の仕事を手がけながら、未来映画社を立ち上げ、自主製作映画「拳銃と目玉焼」(14年)、米のリアルな生産過程と美しい田園風景を映像化した「ごはん」(17年)を発表。「侍タイムスリッパー」は劇場映画3作目となった。
今作を製作中の23年、父親の逝去により実家の米作り農家を継ぎ、広大な水田、慣れない稲作に時間を取られる上、安過ぎる米価のため赤字にあえぎ、映画製作も困難を極め、完成時の預貯金残高は7000円だったという。
和歌山城ホールでの上映会は、伏虎シネオペラの会(西川和樹代表)が企画。安田監督が参加した別の作品に、西川代表がスタッフとして帯同したことが縁となり、実現した。
午前10時半、午後1時半から(開場は各30分前)の2回上映で、チケットは前売り1100円、当日1500円。申し込み、問い合わせは同会(フリーダイヤル0120・778・237、℡080・3764・8811)。