不登校の子を支える からふる・みんなの居場所

子どもたちを優しく見守る橋本代表㊨と石橋さん
子どもたちを優しく見守る橋本代表㊨と石橋さん

「したいことがあればしてもいいし、何もしなくてもいい」――。学校に行けない子どもたちが自由に安心して過ごせる和歌山県岩出市の「からふる~みんなの居場所~(岩出不登校居場所プロジェクト)」が活動を始めて1年がたった。桜台の桜台地区公民館などで月に2回活動している。代表の橋本二郎さん(69)は「学校でも家でもない、ほっとできる居場所で不登校生が安心して過ごし、少しずつエネルギーをためて元気になるチャンスをつくりたい」と話す。

2023年度の文部科学省調査によると、全国の小中学校における不登校児童生徒数は34万人を超え、過去最多を更新し、11年連続で増えている。

文科省が実施する問題行動・不登校調査では「不登校」は、病気や経済的な事情以外の理由で年間30日以上欠席している状態と定義されている。橋本さんによると、30日未満の「潜在的不登校」を含めると、かなりの人数に上り、岩出市では200人以上いるという。

橋本さんは約20年前、息子の不登校、ひきこもりを経験している。それは高校2年生になったある日、突然のことだった。学校に行かず部屋にひきこもった息子。運動部に所属し、友人もたくさんいて楽しそうにしていると思っていた橋本さんは、理由を知ろうと学校に出向き、教師に聞くものの理由が分からなかった。「どうにかしなければ」と無我夢中で病院に行き、精神科やカウンセラーなどあらゆる機関に相談した。

しかし、雨戸を閉め部屋から出て来ない日々が続き、どうしようもなく、息子と取っ組み合いになったこともあったという。「明るくひょうきんな子だったのに、自分が変化を見逃していたのではないかと悔やんだ」と話す。

20歳を過ぎた頃、社会福祉法人一麦会麦の郷(和歌山市岩橋)が運営する居場所「創-hajime-」を知り、支援員のサポートと仲間との活動を通して徐々に元気を取り戻していったという。

橋本さんは65歳で退職。「いろんな人にお世話になった恩返しをしよう」と、岩出と岩出第二中学校で不登校の生徒をサポートする不登校生支援員として活動。学校や家にいづらい子の居場所の必要性を感じ、同団体を立ち上げた。

共に活動するスクールソーシャルワーカーの石橋美枝さん(67)も、娘の不登校で苦悩した経験がある。「親は育て方が悪かったと自分を責め落ち込んでしまう。親が孤独にならず、元気になるためにも気軽に安心して相談でき、親も子もほっと一息つける居場所が必要」と話す。

同団体のメンバーはスクールソーシャルワーカー、不登校生支援員、青少年育成会、ボランティアなど8人。安心して自分の気持ちのままに楽しむ時間を過ごしてもらえたらと、お菓子作りや工作、ゲームなどを用意。過ごし方は自由で、保護者はメンバーに悩みや愚痴を聞いてもらいながら見守る。

現在利用しているのは小中学生5人。最初は緊張していたが、通ううちに笑顔が増え、次のステップに進むことを決めた子もいるという。ある保護者は「親が車で連れて行くのではなく、子どもが自分の意思で歩いて行ける居場所がほしかった」と話す。

橋本さんは今後について「不登校や学校に行きづらい子どもと親の居場所はもっと必要なはず。拠点をいくつか作って連携していきたい」とし、「多くの人に参加してもらい活動の輪を広げたい」と協力を呼びかけている。詳しい活動はインスタグラム(@colorful_ibasyo)で発信。問い合わせは橋本代表(℡090・8237・5411)。