けが防ぐ転び方学ぼう 県柔道連盟が研修会

柔道の受け身を応用した転び方を紹介する腹巻さん
柔道の受け身を応用した転び方を紹介する腹巻さん

加齢による心身の虚弱「フレイル」や認知症予防について理解を深め、柔道の動きを応用した安全な転び方を学ぶ研修会が20日、和歌山市西浜の和歌山工業高校で開かれた。県柔道連盟(藤村利行会長)が主催。全日本柔道連盟、国立長寿医療研究センターが協力した。

同センターが開発した認知症予防の運動プログラム「コグニサイズ」を取り入れ、柔道の体の使い方や転び方が健康寿命延伸にどのように生かせるか、実践を通じて共に考えようと企画。柔道の指導者を中心に、福祉関係者ら約50人が参加した。

研修会では同センターの前島伸一郎センター長がフレイルや認知症予防について話し、同センタースタッフ指導のもと、参加者は頭の体操を組み込んだ足踏み運動や、左右にステップしながら手をたたく動きなど、コグニサイズを体験した。

柔道場での実践では、「紀柔館」(和歌山市木ノ本)代表の腹巻宏一さん(61)が講師となり、高齢者にも取り入れやすいように受け身をアレンジした転び方を紹介。転倒時は衝撃を分散させることが大切だとし、両手をついた状態から肘、肩、背中の順に倒れる動作などを実演した。背中を丸くして振り子のように転がる動きなどを解説し、頭を打たないよう顎を引くことをアドバイス。参加者は動きをまねて、けがを防ぐための転がり方を体に覚え込ませていた。

その他、道具を使い、太もものトレーニングになる動きや、二つのことを同時にしながらバランス感覚を養う運動などを紹介した。

腹巻さんは8年前から地域の居場所づくりを兼ねて、自身の道場でシニアを対象に「転び方健康教室」を開いており「それぞれの年齢や運動経験、身体状況によっては難しい面もあるが、柔道の動きが役に立つ可能性があるのでは、と考えるきっかけになればうれしい」と話した。

5歳から柔道を続けている県立医大整形外科の医師、神前貴洋さん(32)は「軽微な転倒によるけがで寝たきりになったり、生活の質が低下したりする。高齢になってからでなく、若い世代も知識として知っておくことが重要ではないかと感じた。自分自身、柔道に育ててもらい医療の道に進んだので、柔道を通じた社会貢献への意識も再認識しました」と話していた。