水害の逃げ遅れゼロへ マイ・タイムライン講習会

マイタイムラインを作る参加者
マイタイムラインを作る参加者

2023年6月の豪雨により、大規模な浸水被害を受けた和歌山県紀の川市桃山町調月(つかつき)地区で9月27日、地域住民を対象にした水害に備える防災行動計画「マイ・タイムライン」の作成講習会が開かれた。

主催は国土交通省近畿地方整備局和歌山河川国道事務所。講師はテレビで天気予報を伝える気象キャスターで、流域治水アンバサダーの澤麻美さんが務めた。

マイタイムラインは水害が発生した際、慌てず行動するために「いつ」、「何をするのか」を時系列に沿って決めておくツール。15年の関東・東北豪雨で茨城県の鬼怒川堤防が決壊し、多くの市民が逃げ遅れたことを教訓に生まれた。

桃山保健福祉センターで行われた講習会には47人が参加。大雨により貴志川が氾濫や内水氾濫、土砂災害が発生したことを想定してマイタイムラインを作成した。

ハザードマップで自宅周辺の災害リスクや避難先を確認。家族構成、健康状態など、それぞれの状況に合わせ、避難完了から逆算しながら、3時間前、5時間前、半日前にしなければならないことを記入した。

澤さんは近年の大雨について「激甚化(げきじんか)・頻発化、広域化というこれまで経験したことのない大雨が毎年のように全国どこかで発生している」とし、「大きな災害をもたらす大雨の原因は線状降水帯、南北に動かない梅雨前線や秋雨前線によるもの、台風と前線の組み合わせによるものとされている」と解説。

紀の川と貴志川の合流部付近に位置する同地区は、川幅が狭くなり水が渋滞しやすい状況で、洪水や内水氾濫が起きやすい場所だと、地図を基に同地域の特性を説明。

大きな川が氾濫しなくても、水位が急激に上がると支流の中小河川の水がせき止められ、逆流して氾濫を引き起こすバックウオーター現象により大きな被害を受けた各地の事例を挙げた。

澤さんは「線状降水帯の正確な予測は非常に難しいが、技術の開発が進み、現在は半日前から、来年度は数時間前からの予測が始まる。情報をしっかり確認してほしい」と伝えた。

浸水被害を経験した調月中部区長の吉田靖さん(70)は「あの時こうしておけば慌てずに行動できたということが分かり、勉強になった」と話していた。