笑顔の向こうに感じる幸せ 谷所さんが写真展

作品を前に笑顔の谷所さん
作品を前に笑顔の谷所さん

カメラに向かって満面の笑みを浮かべる老夫婦――。飾らない自然な表情から幸せがあふれ出る。和歌山県海南市のアマチュアフォトグラファー、谷所清成(きよしげ)さん(67)の写真展「しあわせの贈りもの」が紀の川市桃山町の「cafe MURO(カフェムロ)」で開かれている。31日まで。

谷所さんは2017年から野鳥を撮影し、数々の賞を獲得。ことしの県美術展覧会では優秀賞、海南市美術展で知事賞に輝いている。

谷所さんは同市下津町に生まれ、県立海南高校を卒業後、九州産業大学と同大学院で写真を学んだ。卒業後はテレビのカメラマンとして活躍したが、35歳で病気を患いふるさとに戻った。そこで待っていたのは、離婚、事業の失敗、そして9歳違いの兄と、8歳違いの姉の死。重なり過ぎる不幸に心はぼろぼろになった。

当時体重は100㌔を超え、健康のために散歩を始める中で写真という楽しみと再会。野鳥を撮りフェイスブックにアップすると徐々に閲覧者が増え、6羽の親子カワゼミが川で漂う写真は3500の「いいね」が付いた。人生のどん底だった谷所さんにとって写真は光となった。

2021年に初の個展を開くと900人が訪れるほど大盛況。自分が撮影した写真をじっと見つめる人の姿を初めて目の当たりにした谷所さんは「写真は記録だけじゃないことに気付いた。人に見て喜んでもらうことの大切さを知り、写真への概念がガラッと変わった」と話す。

今回は「笑顔の向こうに感じる幸せ」をテーマした初の人物写真展。「人生の挫折や苦難を味わい、昔とは幸せの価値観が変わった」という谷所さん。これまで出会った人たちの笑顔を写した作品約10点を展示している。

飾らない自然な表情で笑う人。その奥にこれまで歩んできた人生も感じられる。

谷所さんは「笑顔には人を幸せにする力がある。写真を見て一緒に幸せを感じてほしい」と話している。

午前11時~午後5時。12日は臨時休業。月・火・水曜定休。入場無料(カフェのためワンオーダーが必要)。問い合わせは谷所さん(℡080・3866・4188)。