2023年にGI登録「あら川の桃」

前号より、地域で生産された農作物の価値を可視化し保護する「地理的表示保護制度」を取り上げている。今週は2023年に登録された「あら川の桃」の魅力を紹介したい。
あら川の桃は玉ぞろいで色味に優れ、お中元などの贈答用として取り扱われる市場では高値で取引される一級品の桃。紀の川市桃山町を主産地とする。
歴史は古く、天明2年(1782)、当時の摂津国(現在の大阪府池田市)から苗を持ち込み栽培が始まったとされる。紀の川により堆積した砂礫の土壌により排水に優れた地形で「新田」と呼ばれる地域で栽培が盛んになり「新田桃」の名で珍重され、これが「あら川の桃」の起源となっている。
1889年に周辺の村々が合併し「安楽川村」ができ、1953年に「安楽川町」となり、その名が徐々に浸透。56年、さらに周辺の町村が合併し、桃の生産を象徴する「桃山町」が誕生した。64年には周辺にあった三つの農協が合併。地域ごとにあった小規模な選果場を統合し、66年に新設された総合選果場からの一元出荷される体制となってからは、あら川の桃の名で統一されるようになった。
94年にブランド名が商標登録されるも、使用許可を得ずに名称を使用した桃の流通が横行するなど課題があったが、一定の生産基準を設け、それを満たしたものだけが出荷される仕組みを構築。現在は500人を超える生産者が桃の栽培を行っている。
果肉が緻密で、強い甘味や果汁の多さが特長のあら川の桃。時期に合わせさまざまな品種が次々に出荷され、夏の始まりを感じさせてくれる存在。シーズン到来まで先は長いが、この魅力的な味わいをことしも楽しみたい。(次田尚弘/紀の川市)

